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観光客急増で、ガスや交通供給追いつかず 「満足度」影響を心配する声も… 島の許容量(下) 〈熱島・沖縄経済 第2部〉6


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ターミナルから出てくるクルーズ船の乗客と客を待つタクシー=1日、石垣港離島ターミナル

 八重山地域への観光客増による影響は、交通やガスなどのインフラでも起きている。

 竹富島で民宿マキ荘を経営する萬木忍さんは、りゅうせきからの委託で島内の飲食店などへプロパンガスの配達やメーター検針、集金を担っている。ガスの仕事は父親から引き継ぎ副業感覚でやっていたというが、「最近は自営業をしながらも、ガス不足にならないかずっと気になってガスが本業みたいだ。自分も限界ぎりぎりだ」と話す。

 竹富島では観光客の増加で飲食店などが繁盛するのに伴い、ガスの消費が早くなっている。ガスボンベの定期交換前にガス切れを起こす店も1~2年前から出始めたという。

 昨年末は特に気温が低かったこともありガス切れ寸前だった。年末は貨物船が休みになるため石垣島からガスボンベの供給ができず、人が住んでいない家屋のガスボンベを取り外し緊急で間に合わせた。

 人気飲食店のかねよし食堂では、これまで1週間で30キロのガスボンベ3本を消費するペースだったのが、今では1週間で5本使うようになったという。

 萬木さんは「消費に対して供給が追いついてない。島全体のボンベは増やしたがまだ安定しない。ガスがなければ飲食店も経営できない」と危機感を示す。

 石垣島では大型クルーズ船が2隻同時に寄港する日は島内のタクシーが足りず、タクシー会社には「タクシーがつかまらない」と住民の苦情が寄せられる。

 滞在時間が短いクルーズ客が効率良く島内の観光地を巡るため、寄港時には貸し切りタクシーの需要が一気に高まる。東海交通の請盛真実代表は「5~6万トン級の船だと問題ないが、10万トン級だと車両が足りなくなる」と話す。

 現在、石垣島に接岸できるクルーズ船は7万トン級までで、それより大きい船は沖合に停泊し、ボートで客をターミナルまで運んでいる。来年度は新しい岸壁が完成し20万トン級の受け入れが可能となる。タクシー台数が足りなくなることは容易に想定されるが、運転手不足も顕著なために車両台数を増やすのも限界があるという厳しさだ。

 クルーズ船寄港だけでなく、沖縄観光のハイシーズンとなる夏場は夕方のタクシーも足りない。午後5時半~7時ごろは地元客が居酒屋などへの移動でタクシーを使うのと同時に、観光客も夕食を取るためにホテルから出てくる時間帯だ。タクシー運転手は観光需要で昼勤務の稼ぎが良くなったことから、夜勤務が敬遠される傾向も供給不足に拍車を掛ける。

 請盛代表は「クルーズ船から降りて来る人はまさか公共交通に乗れないと予想はしていないだろう。これ以上客が増え続けるとどうなるか」と観光客満足度に影響すると懸念する。

(「熱島・沖縄経済」取材班・中村優希)