【記者解説】沖縄県内の地価上昇、いつまで続く?


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 県内基準地価は全用途の平均変動率がプラス7・9%となり、2年連続で全国1位の上昇率を記録した。好調さが続く観光を起爆剤に県経済は継続的に拡大している。相次ぐホテルや商業施設、マンションの建設などが土地需要を高め、地価に反映されている。地価上昇がいつまで続くかが注目される中、専門家は当面の上昇基調の継続を予測する。一方、地価が上がりすぎることで負の影響が広がることも懸念される。

 地価の上昇は観光関連産業のほか、低位で推移している金利、人口増加などが支えている。不動産鑑定士の濱元毅氏は「日韓関係や米中貿易摩擦など懸念材料はあるが観光の好調さは続いており、金利状況もいい。県経済は全体として力強く、当面は上昇基調が続くだろう」と分析する。

 7月の県内への入域観光客数は前年比9・0%増の96万3600人と過去最高を記録した。韓国からの観光客は減少したが、その他の地域や国内客の増加が減少分を上回り、全体として増加が続いている。

 観光の好調さを背景にホテル需要が続いており、那覇市内を中心に新規の建設、開業が相次いでいる。資金力のある県外大手や外資の進出でホテル用地の取引は市場価格を超え、坪当たり数百万の取引も見られる。インバウンド客の取り込みをにらんだドラッグストアや土産品店、レンタカー施設など商業施設の新規出店も多く、商業地の高騰に拍車を掛けている。

 住宅地は那覇市中心部で「一般的な所得水準では手の届かない住宅地が増えた」(濱元氏)ほど高騰している。取引件数は若干落ち着きを見せているというが、マンション用地の引き合いは依然強く、建設地は市郊外や中南部地区に広がり、住宅地の全県的な上昇につながっている。読谷村の住宅地の上昇率が前年比11・4ポイント増のプラス17・9%となったのは象徴的だ。

 一方、土地価格が上がりすぎると企業の営業施設建設や事務所賃貸の経費がかさみ、収益の圧迫要因となる。住宅も同様に、建設費や賃貸料の上昇、固定資産税などの支払いが増えれば家計に直結する。

 好景気の反面で企業収益が上がらないと、賃金の上昇も抑えられる可能性は高い。結果的に景気の後退を招く事態を生じさせないためにも、行政や関係機関などを含めた対策を講ずる必要がある。
 (外間愛也)