悲惨さから始まる平和の伝え方でいいの?若者に伝えるには? 出した〝答え〟はカレー


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若者目線の平和を発信しようとピースワンダフルプロジェクトに取り組む「琉球カレー喜美島南国亭」の若手スタッフら=糸満市の平和祈念公園

 糸満市の県平和祈念資料館に今月開店した「琉球カレー喜美島南国亭」で、20代のスタッフらが「大地の恵みから平和を発信したい」と活動「ピースワンダフルプロジェクト」を始めた。背景には、資料館への入館者が減り続ける現状がある。「戦争ではなく平和を切り口に、若者に届く発信をしたい」と食を通して平和を考え、発信する方法を模索する。

 資料館内の施設として、平和の発信はレストランでも大きな使命の一つだ。しかし南国亭を運営する喜企画専務で糸満市出身の親泊元磯専務(24)は「糸満が戦争の“悲しい地”というイメージで見られるのが嫌だった」。マネジャーの大城絢美さん(23)も「戦争は駄目だと分かるが、資料館を見ても自分ごとに感じられず、外に出ると別世界になってしまう」。悲惨さから始まる平和の伝え方に距離を感じてきたという。
 喜企画代表の上谷みち代さん(47)は「自分たちの世代とは感覚が違うが、それが若者の現実」と受け止め「若者に伝わる平和の発信を、若者に任せたい」とスタッフたちに打診。親泊さんたちは「みんなでやろう」と引き受けた。

 「終戦直後はイモしか食べられなかったと聞いた。今は何でも育ち、手に入る。その豊かさも平和じゃないか」と親泊さん。料理を出す時は、地域の復興を思いながら地元産野菜の詳細や調理法を丁寧に伝え、資料館や慰霊碑に行っていない客には「行ってみませんか」と誘う。

 食後にはプロジェクトの活動を伝え、意見を聞くアンケートを依頼している。丁寧な文字で思いがつづられた回答は50枚を超えた。「普段は平和や戦争の話をしないが、みんなちゃんと考えて平和を願っていることが伝わる」とホール担当の元澤一樹さん(23)。アンケート結果は今後、平和に対する意識調査としてまとめる予定だ。ハトとオリーブを描いたプロジェクトのロゴマークもつくった。

 大城さんは「どんなことができるか考えながら、もっと広げていきたい」と話し、自分たちなりの平和への歩みを一歩ずつ進める。
 (黒田華)