10%? 8%? どっち!? 消費増税・軽減税率でどう変わる? 私たちの暮らし


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 10月1日に消費税率が10%に引き上げられる。増税と同時に軽減税率の導入も始まり、外食やケータリングなどを除く飲食料品の税率は8%に据え置かれる。低所得者ほど消費税の負担が重くなる「逆進性」を緩和することが目的だが、支出の多い高所得者ほど恩恵が大きくなるとして効果を疑問視する声も多い。複雑な制度に「完全な理解は不可能だ」(県内小売業者)と悲鳴も上がる。

◆ミネラル水対象、水道水は対象外

 軽減税率の対象となる品目は、酒や医薬品などを除く飲食料品と、週に2日以上発行される定期購読の新聞だ。ただし、飲食料品でも外食などは対象にならず、線引きは複雑だ。

 「飲食料品」の定義は、販売された時点で人の飲用・食用に使われるものから、医薬品医薬部外品、酒類を除いたものというのが基本的な考え方だ。

 例として、生きた肉用牛は販売時点で食用にならず軽減税率の対象外だが、その枝肉は対象となる。生活必需品の水も適用が分かれる。ミネラルウオーターは軽減税率の対象だが、水道水は洗濯や風呂の飲用以外にも使われるため、原則的に対象外とされる。ウオーターサーバーの中身の水は対象だがサーバー本体は飲食料品ではなく対象外となる。

 酒類は、料理の原料とする場合でも軽減税率の対象外。みりんも対象外だが、アルコール分1%未満のみりん風調味料や塩を加えて飲用できないようにした料理酒、ノンアルコールビールは対象となる。

◆価格決めに苦心/外食と持ち帰りある飲食店

 同じ飲食料品でも、外食は軽減税率の対象にはならない。外食と持ち帰りの両方を手がけている店舗では、同一商品で価格が異なる事態となるため、値付けに頭を悩ませている。

 外食の範囲は、飲食店などがテーブルやいす、カウンターなどの設備のある場所で飲食させる場合と定義されている。コンビニ店内のイートインスペースも外食扱いとなる。カラオケボックスで料理を頼んだ場合やホテルのルームサービス、客の指定した場所に行って料理を作ったり給仕したりするケータリングも外食扱いで、軽減税率は適用されない。

 持ち帰りと店内飲食の双方に大きな需要があるファストフード店や牛丼店では、軽減税率導入後の値付けについては各企業で判断が分かれている。

 吉野家やモスバーガー、ミスタードーナツ、スターバックスコーヒー、ドトールコーヒーショップなどは商品の本体価格を据え置き、店内飲食と持ち帰りに異なる税率を適用する。利用者にとってはそれぞれの場合で支払額が変わることになる。

 すき家、松屋、ケンタッキーフライドチキンなどは本体価格を調整し、店内飲食と持ち帰りを統一した値段で販売する。マクドナルドも今月10日に税込み価格をそろえると発表した。利用者の分かりやすさを重視した形だ。

 コンビニなどのイートインコーナーで食べようとする客が、「持ち帰り」と告げて8%で購入するケースも想定される。国税庁は、大半の商品が持ち帰りという前提で営業しているコンビニの場合、店側は全ての客に意思確認をする必要はなく「イートインコーナーを利用する場合はお申し出下さい」などの掲示で足りるとしている。

◆税収の3割が消費税/増税、本当に必要?

 消費税率10%への引き上げを目前にして、軽減税率の適用やキャッシュレス還元でいかに消費を減退させないかに関心が集まっている。しかし、そもそも消費税増税が本当に必要な政策なのか、立ち止まって考える必要がある。

 政府は消費税引き上げの理由として「少子高齢化により現役世代が急激に減少していく中で所得税や法人税の引き上げをすれば、より一層現役世代に負担が集中する」としている。所得税と法人税は不景気の時に税収が減少しやすく、消費税を安定した税収と捉えていることも大きい。

 しかし、消費税の安定性は、食料品など生活必需品を含めた全ての商品、サービスの消費に幅広く網を掛けているためだ。低所得者ほど負担が大きくなる「逆進性」の裏返しと言える。消費全体を押し下げるため「景気を冷やしてしまう」と指摘する専門家も多い。

 消費税が導入された1989年に国の一般会計税収合計は54兆9千億円で、消費税の税収は3兆3千億円と税収全体の6%にすぎなかった。所得税21兆4千億円(36%)、法人税19兆円(34・6%)が税収の柱だった。

 しかし、消費税が増税される一方で、法人税率は89年の40%から現在は23・2%と段階的に減少した。所得税の最高税率も一時よりは上昇したものの89年の50%から現在は45%となっている。結果として2019年度予算では消費税の税収額は19兆4千億円に上り、税収全体の62兆5千億円に占める割合は31%まで拡大している。法人税12兆9千億円(20・6%)よりもはるかに多くなっている。

 政府はキャッシュレス還元やプレミアム商品券などの対策をするが、経済の減速傾向が顕著となる中での増税に、不安は払しょくされていない。