prime

竹富島が入島料徴収に至った背景とは…観光急増の島が突きつける現実 開発対住民(下) 〈熱島・沖縄経済 第2部〉9


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
水牛車や自転車に乗った観光客でにぎわう竹富島=8月28日、竹富町竹富島

 9月1日から竹富島で入島料300円の徴収が始まった。島の景観や自然を維持・保全する活動に使われ、一部は外部資本が購入した土地の買い戻し運動(トラスト活動)に活用する。観光客の増加で昔ながらの風景や自然環境が変化し、過度な開発が進む可能性がある中で、島を守るために導入された。入島料の支払いは任意で、主に観光客が対象だ。島民は支払いの対象外となっている。

 竹富島内のターミナルや民宿などには入島料の協力を呼びかけるポスターが掲示され、竹富島行きの船が出る石垣港離島ターミナルでは券売機に立ち止まる観光客の姿が見られた。年間約50万人の観光客のうち40%からの徴収を目標とし、徴収金額は年間約6千万円になると試算する。

 竹富島では過去にも観光客から入島料を徴収する案が出た。過疎化が進み耕作放棄地が増え、伝統文化の継承に危機感を覚えた島民から提案が出たという。入島料は伝統文化の継承などに使う計画だったが、当時は島内から反対の意見が出たことから実現に至らなかった。入島料は長年、島内で議論されてきた案件でついに実現に至ったが、島民の受け止め方はさまざまだ。

 島で旅館を経営する女性(71)は「100年後もそのままの島であるために入島料は必要だ」と考える。観光客のマナーは以前より良くなったものの、ペットボトルなどのゴミは減っていない。女性は「たくさんの観光客が来るようになってからゴミが増えて道が汚れている。海岸の掃除も必要だ」と強調し、入島料を財源とした地域美化活動の推進を求めた。

 一方、島に住む男性(80)は入島料の徴収に複雑な思いを持つ。高校進学で島を離れる若者が多い竹富島では労働力不足が深刻化している。男性は「島を支える人の絶対数が少なくなった」とつぶやく。以前は島内の住民で島の景観維持や美化活動ができていたが、過疎化に伴い近年は厳しい状況だ。男性は「地域を守るためには結局、観光客からお金を取らないといけない」と入島料に一定の理解を示す。しかし竹富島が抱える課題を根本的に解決するために、入島料という手法が正しいのか判断に迷っている。

 徴収した資金の3分の1は無秩序な開発を防ぐトラスト活動に充てる。島内で飲食店を経営する男性は「観光客からお金を取る前に島民から徴収すべきじゃないか。観光客に関係ない土地の買い戻しに充てるのはどうなのか」と入島料の使い道を疑問視する。地域の土地を取り戻すのなら、住民の自助努力で資金を造成すべきと考えている。

 急激な観光客の増加を背景に導入された竹富の入島料。住民は期待や疑問の思いを抱きながら制度の開始を見守る。入島料が持続可能な観光に資するものになるか、島民を含む多くの関係者が注目している。
 (「熱島・沖縄経済」取材班・中村優希)