【識者談話】工業事業、問われる行政の手法 宮田裕・沖大沖国大特別研究員


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宮田 裕(沖大・沖国大特別研究員)

 そもそも公共事業は経済活動、県民生活の向上などの便益を目的に実施されるものである。事業実施に当たり、費用対効果などの経済効果を重視し事業認定される。県は都市計画決定したが、2003年の事業着手前に関係者との合意形成が不可欠だ。現在、米軍側は県が申請する立ち入り調査を拒否しており、事業が事実上、滞ってしまっている。

 県が03年にバイパスの事業に着手する前の段階で、3者の綿密な調整が必須だったのではないか。当時の那覇防衛施設局と米軍のやりとりの有無を当時、県も確認すべきではなかったか。なぜ今まで関係機関との調整が放置されていたのか、公共事業に対する認識も問われている。防衛局と米軍との事務調整文書が廃棄され、事実解明ができない状況にも問題がある。不透明な行政手法と言わざるを得ない。本事業は、米軍施設区域内で実施されるものであり、防衛局は事業実施に当たり「当局と米軍との事前調整が必要である」と県に回答している。この文書では、米軍側から異存はないと了解をもらったとは断言できない。関係機関との理解と協力なき公共事業の執行に対する、県の行政手法と資質が問われることになる。
(宮田裕 沖大・沖国大特別研究員)