下請けや孫請けの建設業者の現場を取材しようと、訪れた本島北部の建設現場では、午前8時には各施工業者が集まる朝礼が行われていた。見渡すと40代以上と見られる作業員が多い。休憩時間に取材に応じた40代班長は自身の右肩を指しながら「資材を乗せて運ぶから右肩が左肩の1・5倍ぐらい大きくなった」と語る。日焼けした顔つきからはたくましさも感じるが、日々の肉体労働のせいか、疲労感もにじんでいた。
建設業界では人手不足が深刻な状況だ。労働人口は他の産業に比べ、若年層(15~29歳)の割合が低く、定着率の低さも指摘される。2017年就業構造基本調査によると、県内で建設業に従事する労働者は7万500人。うち若年層は1万人で全体の7分の1程度にとどまる一方、40~59歳は3万4200人と半数近くを占める。
本島中部の建設業者社長は「若い人は仕事がきついからかすぐに辞めていく。大型商業施設は時給も高く、そこに流れていく人が多い」と説明する。
政府は人手不足解消のために19年4月、入管法を改正し、新しい在留資格である「特定技能」を新設した。特定技能ビザ新設により、これまでは一部の例外を除いて外国人が働くことのできなかった、建設業界や造船業界、宿泊業界などで外国人の就労が可能となった。1号ビザを取得した外国人は5年間の就労が可能となる。2号ビザを取得すれば5年目以降も就労が可能だが、現場からは技能継承や長期的視点での人材育成に課題を指摘する声も上がる。
建設業界関係者によると、こうした改正入管法を受け、東南アジアまで出向き、現地で日本での労働意欲がある若者をリクルートする一部業者が県内でも出ているという。建設会社社長はこうした動きについて「今の主力は40代が多いが、10年後も同じ業務ができるとは思えない。外国人労働者を入れても、5年後、10年後も働いてくれるかは不透明だ」と長期的な人手確保に課題を指摘する。
県建設業協会も若年層の人材確保に向けて取り組んでいる。工業高校の生徒を対象に、資格取得に向けた費用などを助成してきた。源河忠雄専務理事は「働き方改革などもある中、将来的には完全週休2日制など労働環境改善に業界としても取り組む必要がある」と強調する。次期振興計画策定に向け「建設業は景気に左右されるイメージがあるが、雇用の安定・確保に行政も取り組んでほしい」と求めた。
(当間詩朗)