引きこもり、ニート、不登校… 沖縄の若年無業者率、全国平均より高く 支援へ相談所やマンパワー不足 〈復帰半世紀へ・展望沖縄の姿〉3


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子ども・若者のさまざまな相談を受けるソラエの職場=9月、那覇市

 「学校に行きたいけれど体がついていかない」「息子が人間関係が苦手で引きこもりがち。どうしたらいいか分からない」。そのような内容の絶え間ない相談に対応するのは、県子ども・若者総合相談センターを運営委託する「sorae(ソラエ)」の相談員だ。0歳から39歳までの子ども・若者のさまざまな悩みに対応するワンストップ窓口として2014年10月に開所した。年間延べ5千件以上の相談がある。統括責任者の仲間玲子さんは「一人で抱え込まないで相談に来てほしい。何をしても駄目だったという子どもたちの希望のともしびになりたい」と話す。

 県は7月に沖縄21世紀ビジョン基本計画等総点検報告書(素案)で五つの将来像の成果と課題、今後の沖縄振興の方向性を示した。将来像「心豊かで、安全・安心に暮らせる島を目指して」では「子ども・若者が心身ともに健やかに成長し、豊かな可能性が発揮できるよう、子ども・若者の育成支援に取り組んだ」と総括した。

 しかし若年無業者率(15~34歳人口に占める割合)は全国平均を上回り、全国と同様に増加傾向にある。社会生活が困難な子ども・若者支援について「地域、家庭、教育、医療、雇用など各分野の関係機関等が連携し総合的に支援する体制を整備する必要がある」と記している。

 ソラエは親、子ども、支援者などから相談を受ける。相談の4割が不登校、2割が引きこもりやニートだ。主任支援員・臨床心理士の松本大進さんは子どもの問題の背景について「さまざまな問題があるが、ゆとりのなさが世代の下に降りてきているのではないか」と家庭のゆとりが子どもの心に与える影響を指摘する。

 家庭を訪問する「アウトリーチ」にも力を入れる。「心の問題は精神医療と切り離せないが、薬以外の方法で子どもの心が元気になる所をつくることが大事だ」と話す。

 ただ、県全体では支援が必要な若者に十分に行き届いていないのが現状だ。県内の15~39歳までの引きこもり者数は推計で約6800人。うちソラエや県ひきこもり専門支援センターなどに昨年度相談があったのは2%に満たない。県青少年・子ども家庭課の内山知洋主査は「補足率が低いのが課題だ」と話す。市町村の相談機関は石垣市のみ。相談機関やマンパワー不足も指摘される。補足率を高めようとソラエは19年度から「保護者支援」を行う団体や機関をつなげるワークショップを始めた。同じ地域で活動する団体が互いの活動内容を知る機会にもなっている。沖縄の日本復帰50年に向け、子ども・若者を取りこぼさないための施策とそれぞれの対応が問われている。
 (中村万里子)