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ガザで起きていることは「ジェノサイド」 パレスチナ現代史専門家の岡真理さんが講演 植民地主義や人種差別の克服を訴え


ガザで起きていることは「ジェノサイド」 パレスチナ現代史専門家の岡真理さんが講演 植民地主義や人種差別の克服を訴え 講演する早稲田大の岡真理教授=10日、那覇市の県立博物館・美術館講堂
この記事を書いた人 Avatar photo 南 彰

 パレスチナ自治区のガザでイスラエル軍による攻撃が続く中、早稲田大教授の岡真理さんが10日、「パレスチナ・ガザはいま」と題して、那覇市の県立博物館・美術館講堂で講演した。ガザで起きていることについて「ジェノサイド(民族大量虐殺)だ」と指摘し、植民地主義や人種差別を克服する必要性を訴えた。

 岡さんは「ガザに地下鉄が走る日」などの著作があるアラブ文学・パレスチナ現代史の専門家だ。

 「ナチスは人里隠れてジェノサイドをしていたが、いまイスラエルは世界が周知のなかで行っている」と指摘。「そのことを『民主主義国家』を名乗る国が支持している恐ろしい状況で、人倫の奈落だ」と語った。特に10月に始まったイスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘について、「歴史的な文脈」が伝わっていないことに危機感を示した。

 岡さんはイスラエル建国(1948年)の背景にさかのぼり、信仰を理由にした差別をやめたはずの近代市民社会になっても、「反ユダヤ主義という歴史的な病」を克服できなかったヨーロッパ社会の問題があったことを指摘した。「その犠牲者であったユダヤ人も軍事力によって、ヨーロッパ以外の土地をわが物にして、自分たちの国をつくることを当然のことと思っている」と説明。国際法や人権を無視した長年の「占領」の根っこに、ヨーロッパのレイシズム(人種差別主義)や植民地主義があるという考えを示した。

 また、「ハマスはテロ組織」という見方に対しても、ハマスが2006年の選挙に勝利したことを指摘。「選挙後、『パレスチナ独立を認めてくれるなら長期休戦条約を結ぶ準備がある』とまで言っていたが、イスラエルがガザを完全封鎖した」などと経緯を踏まえて理解する必要を説き、「ハマスの責任もあるが、国際社会が非民主的なありようにしてきた部分がある」と語った。

 岡さんは講演の締めくくりで、「戦後、植民地支配やレイシズムを反省してこなかったことが頂点に達している。歴史的な課題を克服していかないといけない」と述べた。

 (南彰)