13日に投開票された台湾総統選は、与党民主進歩党(民進党)の頼清徳副総統が、最大野党国民党の侯友宜・新北市長、野党第2党台湾民衆党の柯文哲・前台北市長との接戦を制し、初当選した。台湾の独自色を強めるとみられる一方、中台対立激化も懸念される。総統選で示された民意の意味、盛んに言われる「台湾有事」など沖縄への影響について識者に聞いた。
頼清徳氏が過去に自らを「実務的な台湾独立の工作者」と評したこともあり、北京(中国共産党首脳部)は警戒している。ただ中国が今までよりはるかに過激な軍事行動を起こすことはないと思う。一時期に比べ、基本となる米中関係が安定しているからだ。
米中関係が安定していれば台湾問題もコントロールできるというのが長い間北京の基本的な考え方だった。しかしトランプ政権がチャイナバッシングを始め、米中関係は一気に悪化した。それでも昨年、米中首脳会談が行われたことで、回復してきている。
頼氏が現在の対中政策の踏襲を明言したことは大きな意味を持つ。ワシントンに対し信頼してほしいというメッセージだ。ただ米大統領選の結果によっては不安定になることに留意が必要だ。
日本政府は南西諸島の防衛強化を進めている。一方沖縄では、沖縄戦で多くの命が失われた歴史的な記憶が忘れられることはない。再び戦争に巻き込まれないように対応するのは自然なことだ。
沖縄県が地域外交室をつくった本来の目的は内外に平和を求める沖縄の立場を発信することだった。しかし知事は訪中の際、有事について話していない。台湾訪問時も経済的な交流が主で知事が公に台湾有事について語る機会はなかった。
なぜ沖縄が台湾有事に反対するのか、台湾では十分理解されていない。中国も有事には反対だが、国内問題に干渉するなという立場で、悲惨な沖縄戦の記憶から深い危機感を持って戦争に反対する沖縄とは全然違う。沖縄はこの違いを説明する努力が足りていない。台湾との信頼関係が崩れないよう、しっかり発信していくべきだ。
沖縄は中国、台湾とバランスよく関係を維持することが大切だ。最終的に、それが沖縄の平和と発展につながる。
(国際政治学)