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HIVと重複感染もある梅毒 社会で対策、積極的な検査重要<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>20


HIVと重複感染もある梅毒 社会で対策、積極的な検査重要<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>20
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 「県は15日、2023年の梅毒患者報告数が10日時点で137例(男性98例、女性39例)となり、22年の計134例を超えて3年連続で過去最多を更新したと発表した。県は、HIVとの重複感染も17例確認されていることから、必要に応じた検査や治療を呼びかけている」。これは23年12月の本紙記事の一部です。同様の内容が新聞、テレビなどで報道されましたが、読者の皆さまはどう感じたでしょうか。

 「私には関係ない」と思った方や、「この症状もしかして」と不安になった方もいるかもしれません。この報道以降、年齢性別を問わず、多くの相談がありました。検査や治療、感染経路について説明し、まず検査を受けることを促しましたが、相談を受ける中で感じたのは、多くの方が梅毒の感染は膣性交だけと思っていたり、いずれ自然治癒すると勘違いしたりしていたことです。

 梅毒の病原体である梅毒トレポネーマは、傷口からの浸出液、精液、膣分泌液、血液などの体液に含まれており、非感染者の粘膜や傷口などと直接接触することで感染します。コンドームが覆わない部分の皮膚などでも感染する可能性があるため、コンドームを使用しても、100%予防できるとはいえませんが、コンドームを使用することで感染リスクを下げることができます。

 そのため、膣性交の時だけでなく、オーラルセックス(口腔性交)やアナルセックス(肛門性交)の時も必ずコンドームを着けることが望ましいといえます。また、梅毒に感染した場合、自然治癒することはありません。未治療の場合、感染後数年~数十年後には心臓や血管系の症状が出るほか、認知症、手足の痙攣(けいれん)、麻痺(まひ)などに進行する場合があります。また女性の場合は、妊娠中に胎盤を通じて胎児に感染し重篤な症状を引き起こす「先天梅毒」の恐れもあります。

 梅毒は、予防行動のほか自身のセクシャルヘルスのためにも定期的な検査を受けることにより、仮に感染した場合でも治療ができる感染症です。21年にペニシリン系の抗菌薬の筋肉注射が承認され、お薬の内服による治療、注射による治療があります。

 HIV感染症同様、一人一人がまずは自身のために正しい知識の習得や定期的な検査を受けることが重要です。また医療機関では梅毒の早期診断と治療、ほかの性感染症の疑いで受診した人に対する積極的な梅毒検査の実施など、社会全体がそれぞれの立場で性感染症対策をしていくことが重要です。

 (新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)