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診療報酬改定 多機関連携で患者支援を<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>21


診療報酬改定 多機関連携で患者支援を<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>21
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 2024年度は、診療報酬、介護報酬、障害福祉サービス報酬のトリプル改定の年となっています。現在、各現場では改定内容を自機関でどのように展開していくかを含め、情報収集など準備をされているかと思います。そこで今回は、主に医療分野でHIV感染症について知っていただきたい点についてまとめてお伝えしたいと思います。

 陽性者の転院や受け入れの調整時、転院先が特定入院料算定病床(緩和ケア、回復期、地域包括ケアなど)の場合、高額な抗HIV薬を理由に断られることがいまだに多くあります。しかし、08~10年にかけた診療報酬改定により、特定入院料算定病床において抗HIV薬は、特定入院料から除外され(除外薬指定)出来高算定が可能となっています。

 除外対象となる薬は抗ウイルス剤、血友病の治療にかかる血液凝固因子製剤および血液凝固因子抗体迂回活性複合体です。出来高算定可能な対象となる入院料には、回復期リハビリテーション病棟入院料、緩和ケア病棟入院料および認知症治療病棟入院料、地域包括ケア病棟入院料などがあり、厚生労働省より通知も行われており、ホームページなどでも確認することができます。

 抗HIV療法の進歩によって、HIVとともに生きる方々の予後は改善し、長期生存が可能になりました。今後は高齢化や合併症などにより、リハビリや療養などを必要とする陽性者はさらに増加することが予測されています。これらの機能を有している機関では、抗HIV薬は出来高算定が可能ですので、受け入れに関して「抗HIV薬が高価」という課題はクリアできると思います。

 その他、受け入れ検討の段階で不安や疑問に対しては、ネットワーク事業の一環で出前研修もあります。また受け入れ後もコーディネーターが継続し支援しますので、ぜひご活用いただければと思います。

 住み慣れた地域で安心して必要な医療、介護などを受け生活していくことができる体制・環境づくりは、決して中核拠点病院だけでできるものではなく、さまざまな機関が協力、連携する必要があります。同じ地域の中でHIVとともに生きる方々の「生きる」を一緒に考え、ともに支えてください。

 (新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)