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クリニックでのHIV検査 コロナで保健所検査中止に<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>17


クリニックでのHIV検査 コロナで保健所検査中止に<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>17
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 クリニックおもろまちは2007年1月、天久台病院のサテライトクリニックとして、那覇市おもろまち4丁目に開院しました。開院から不眠症やうつ病、パニック障害、統合失調症等の対応に加え、性同一性障害の診断とホルモン療法を行っています。乳房切除術や性別適合手術などの手術療法については、月に1回複数施設の医師が参加し沖縄県立中部病院で判定会議を行ってきました。そして、開院から13年目を迎えた20年6月、当クリニックは、「HIV検査外来」を開始しました。

 心療内科を標榜するクリニックでなぜHIV検査外来を開始したのか。それには新型コロナウイルス感染症が大きく影響しています。新型コロナの流行は、私たちの社会活動のさまざまな場面で影響がありました。保健所のHIV検査の中止もその1つだといえます。これまで県内6カ所の保健所では、年間2千件余りの無料匿名HIV検査を担っていましたが、新型コロナのパンデミック以降は、HIV検査の休止・中止を余儀なくされました。沖縄県はコロナ禍以前から、病状が進行した形で診断されるHIV症例件数が人口10万人対で常に全国上位に位置しています。HIV検査の機会が奪われることで、状況のさらなる悪化を懸念したエイズ治療中核拠点病院である琉球大学病院から依頼があり、外来開始前に研修会などを行った上で、HIV検査外来を開始しました。

 当クリニックの即日検査では、採血は注射針を使用せず、血糖値を測定する針で指先を刺し、少量の血液で行っています。検査後、約15~20分で結果が出て、即日結果を伝えることができます。受検者の多くが自身の性の健康のために定期的に検査を受け、またアクセスとしても学校帰りや仕事の行き帰りなど、曜日や時間帯の利便性がいいとの声が聞かれています。

 この3年3カ月で100人以上が当院で検査を受け、6人の方をエイズ治療中核拠点病院へ紹介し、速やかな治療につなげています。また23年9月から、曝露(ばくろ)前予防内服PrEP(プレップ)と呼ばれるPrEP外来も開始しました。

 今後もエイズ治療中核拠点病院、感染症診療ネットワークコーディネーターと連携をとり、地域のクリニックとして皆さまの健康のサポートを続けていきたいと思います。

(宮島英一、クリニックおもろまち院長)