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職場での個人情報保護 全ての人が働きやすく<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>23


職場での個人情報保護 全ての人が働きやすく<じぶんごとで考えよう HIV/エイズ>23
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 「HIV感染症の人は職場にはいない」などといった声を出前研修先や関係機関でよく耳にしますが、本当にそうでしょうか?

 HIV/エイズの治療は飛躍的に進歩し、適切な治療を継続することにより、非HIV患者とほぼ変わらないライフサイクルを送ることができます。HIV陽性者のための総合情報サイト「Futures Japan」が2016―17年に実施したウェブ調査では、HIV陽性者のうち86・2%が何らかの仕事をしていることが分かっています。この結果からもあなたが知らないだけですでに出会い、共に働いているのではないでしょうか。

 他の病気同様、HIV陽性であることを職場へ伝える義務はありませんが、同調査によると、職場の同僚、上司などへ伝えている人はそれぞれ6~12%。いずれか1人にでも知らせている人は21%と、「病名を知らせた場合どんな対応をされるか分からない」という不安から多くの人は病名を知らせず働いています。またHIV陽性であることを雇い主や上司に知られると職を失うと思っている人が63・6%を占めるなど、情報の漏洩(ろうえい)を不安に思っている状況にあります。

 HIV感染症に限らず、事業者はすべて個人情報保護法の適用対象となっており、「生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別することができるもの」が個人情報とされます。病歴や心身の機能の障がいに関連する情報も要配慮個人情報とされ、本人の同意を得ず取得することも禁止されています。もし、あなたが職務上で知り得たとしても守秘義務があります。

 その他、厚生労働省では、職場におけるエイズ問題に対する企業の自主的な取り組みを促進するため、1995年2月に「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」を定め、企業における社内の意識啓発等を進めています。また98年4月、HIVによる免疫機能障がいにより日常生活が著しく制限される場合は、福祉施策上の「身体障がい」として認定し、雇用対策として同年12月より、障がい者雇用に関する各種助成制度の対象とするなどさまざまな取り組みを行っています。

 個人情報の取り扱いをはじめ、HIVとともに生きる方が職場にいる、いないにかかわらず、子育てや介護をする人に対して必要な配慮があるように病気や障がいがあってもすべての人にとって働きやすい環境づくりのため皆さんの職場を今一度見直してみませんか?

 (新里尚美、琉球大学病院第一内科・県感染症診療ネットワークコーディネーター)