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沖縄のHIV検査率向上を 米製薬会社、医療機関の予約サービスに寄付 「流行終わらせる」


沖縄のHIV検査率向上を 米製薬会社、医療機関の予約サービスに寄付 「流行終わらせる」 ケネット・ブライスティング氏(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 嶋岡 すみれ

 医薬品の研究開発などをする米製薬会社「ギリアド・サイエンシズ」日本法人のケネット・ブライスティング社長が、このほど琉球新報のオンラインインタビューに応じた。同社は2023年11月、主催する寄付プログラムを通じた支援先の一つとして、沖縄の医療機関にオンラインでヒト免疫不全ウイルス(HIV)の検査予約ができる事業を決めた。支援を受け、今年6月から運用が始まっている。同氏は「われわれの目標は2030年までに日本でHIVの流行を終わらせること。(沖縄への支援で)多くの人が検査を受けやすくなることで、沖縄での検査率を向上できると思う」と期待感を示した。

 国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、25年までに「95―95―95」を達成し、30年までに「HIV流行終結」を目標に掲げる。これは、(1)HIV陽性者の少なくとも95%が自分のHIV感染を知る(2)自らの感染を知っているHIV陽性者の少なくとも95%が治療を受けている(3)治療を受けているHIV陽性者の少なくとも95%は体内のウイルス量が抑制されている―を指す。同社によると現在日本では、HIV陽性者の診断率は86%と推定される。

 HIVは早期発見・早期治療することで、エイズの発症を防ぐことができる。沖縄は22年の人口10万人当たりの新規エイズ患者が0・61人と全国最多で、早期発見が課題となっている。

 同社は23年から、日本で95%のHIV検査率を実現するために、HIV検査機会の拡充を目的とした活動への寄付を始めた。その一つとして、沖縄で実施するオンライン検査予約サービスへの支援を決めた。

 同サービスは予約の利便性を高め、早期発見・早期治療につなげることを目的とする。運営は琉球大学病院をはじめとする、県内のエイズ治療中核拠点病院で構成する「沖縄HIV臨床カンファレンス」が担う。これまでは日中の限られた時間内に医療機関への電話予約が必要だったが、オンラインで24時間いつでも予約できるようになった。

 ブライスティング氏は「(予約しやすくなることで)HIV陽性者を早期にキャッチできるのを期待している。それにより『95―95―95』の最初の95%に貢献できるのではないか」と話した。

 同社は21年12月、当事者や支援団体などと共にコンソーシアム(共同事業体)として「HIV/AIDS GAP6」を発足。各団体が連携しながら、検査や治療、予防、誤解・偏見などの課題解決を目指し、活動を始めている。

 新たな薬剤の開発も進行中だ。現在のHIVの基本的な治療は1日1回1錠の服薬だが、同社では、3~6週間に1回の皮下注射で治療効果を得られる長時間作用型の薬剤の開発などにも取り組んでいる。

 ブライスティング氏は「現在のHIV治療は非常に効果的だ。大切なのは初期に診断を受けてしっかり治療すること。HIV流行の終結に向けて貢献していきたい」と話した。

 (嶋岡すみれ)