沖縄での貧困の連鎖を絶つために何ができるかを考えようと、困難を抱える生徒たちと向き合ってきた大阪府立西成高校の山田勝治校長(67)を招き、講演会「反貧困学習から学ぶ 沖縄の子どもの未来 “働く”とは」が2日、那覇市のタイムスホールで開かれた。
グッジョブセンターおきなわと、県雇用政策課の主催。多職種の連携で就労困難者や生活困窮者の支援につなげようと、教員や福祉、行政の関係者、労働団体などに参加を募り、一般参加者も含め164人が訪れた。
建前を捨てて
山田校長は「教員は勉強ができて、学校に戻ってきた。建前を捨てないと、学校が嫌で家が大変な生徒と向き合えない」と切り出し、支援に携わる人に「自分は誰なのか、まず問わねばならない」と促した。「子どもの貧困は何とかしないといけない、と言うが、その原因は親の貧困。なのに親の貧困は自己責任とされる」とも指摘した。
西成高が実践する反貧困学習は、シングルマザーの支援制度や、不当解雇との闘い方などを扱う。生徒の貧困率はとても高い。生徒は自らの生活と重ね合わせ、貧困の根本にある社会構造に目を向けることになる。
自己責任ではない
同校は生徒の4割が小中学校で不登校を経験しているという。「どうせ」と自信を失った生徒が、「変えよう」という気持ちを取り戻すために反貧困学習がある。
生活保護世帯は進学率が低く、中退率が高い。「それは生徒本人のせいではない。高校中退をいかに止めるかが重要」と山田校長。朝の授業2時間は、30分ごとに3分割し、小3から中3の英語、数学、国語に毎日取り組む。「来たら勉強が分かる」と知って、遅刻が減ってくるという。
「キャリア戦略」も同校の大きな特徴だ。「部活よりアルバイト」と、アルバイト支援をし、どんな職種が適しているか相談に乗る。地域の事業所約80社がインターンシップに協力してくれる。就職を希望する生徒の就職内定率は12年連続で100%だ。
山田校長は地元での就職を勧め、「困ったらいつでも相談に戻ってきて」と話す。
大学進学で格差の連鎖を絶てるのか。山田校長は、大学の中退率の高さ、奨学金返済の大変さを指摘し、「貧困家庭に大学進学は勧めない」と言いきる。「高卒で働くことにもっと光を当ててほしい。大学に『行けなかった』ではなく『行かなかった』のだ」とも。
答えを一緒に探す
大事なのは「自分の考えをまとめ、人に説明できること」だ。そうなるように、生徒を支えるのは教員だけではない。キャリアコンサルタントや地域コーディネーター、カウンセラー、ソーシャルワーカーらが関わり、隔週の生徒生活支援委員会で情報共有をする。
教え込むのではなく、子どもにとって最もよい答えを子どもと一緒に探す。そうした姿勢の大切さを山田校長は繰り返し強調した。
講演には、多職種の協働のヒントも盛り込まれた。講演を受け、参加者らは小グループに分かれ「沖縄県でできる支援とは何か」をテーマに話し合った。
(宮沢之祐)