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「マルちゃん」印に携わり38年 即席カップ麺の開発をリード 食を見つめ、次を探る 東洋水産筆頭常務・真喜屋理恵子さん <県人ネットワーク>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
マルちゃんで県内でもおなじみの東洋水産の常務を務める真喜屋理恵子さん

 マルちゃんの即席カップ麺「沖縄そば」といえば、県内では日常に溶け込んだ定番商品。いっときでもふるさとを離れた人にとって、このカップ麺の潜在力は計り知れない。「ふるさとの風景を思い起こさせ、郷里へいざなう一品」に一変するから日常の食の持つ力は侮れない。まさしくソウルフードなのだろう。

 メーカーは都内に本社を置き、全国展開する東洋水産。「赤いきつね」と「緑のたぬき」。そんな独特のキャッチフレーズのテレビコマーシャルを流す会社と言えば符合する。この会社に1985年に入社して約38年。開発畑を歩んで、現在は常務取締役を務める。総合研究所のある群馬と東京の往来を繰り返す日々の中で、いわば日本の食の変化を見詰め、次を探る。

 さすれば即席カップ麺「沖縄そば」の開発者かと思いきや、入社1年前の84年に、このロングセラー商品は誕生したという。商品の改良には入社して後に携わったが、県出身者が絡むことなく生まれた商品となれば、がぜん企業も身近になる。聞くと入社動機は、そのいきさつとは関係なく「小さい頃から食に興味があった」ためと言う。

 振り返れば沖縄は日本、中国、米国の結節点でもあり、食の文化が流入して融合する特色も持つ。「父が幼少期から四季折々の旬の食材や、いろいろな国の料理に触れさせてくれた」と語る。多様な味わいが小さな島に凝縮するだけに多彩な食も身近な環境となる。

 学生時代は管理栄養士の課程を学んだ。就活を前に、さて取得した資格をどう生かすか、悩んだ末、食品会社にたどり着いた。「職種に選択の幅が広い食品会社の開発職を希望し入社した」と言う。

 入社2年目の86年は男女雇用機会均等法が施行された。「できる仕事が増えると同時に仕事が楽しくなり、いろいろなチャレンジをさせてもらえるようになった」。現場では即席麺のスープ開発を担当した。開発商品が店頭に並ぶと喜びもひとしおだったという。

 沖縄限定商品の「沖縄そば」の改良にはひときわ思い入れもある。「家族や友人にも意見を聞き」地元の味わいをまさに加味した。食の追求と改良は多様な人材が関わり、関わってきたことで今も連綿と続く。

 とはいえ、原点があってこその改良にほかならない。今や国内のラーメンは「動物系」と「魚介系」のだしのコラボが主流だが、足元を照らせば、それは「沖縄そば」そのものではないかと思い至る。「スープのルーツは沖縄にある」との話にはひざを打つ。ユニバーサル仕様のポテンシャルを秘めていたことに気付く。

 現在は東洋水産の総合研究所長であるとともに品質保証や工場、企業の社会的責任活動であるCSRなどを担当する。原点となる故郷の次代の担い手への一言を聞いてみた。「自分の限界を決めないで、まずはやってみる。一歩踏み出してみる」。沖縄には「柔軟性と力強さ、たくましさがある。それがいいところ」。郷土が育み、備えるしなやかさと底力に次の可能性を見いだす。
 (斎藤学)


 まきや・りえこ 1961年生まれ、那覇市出身。久茂地小、那覇中、那覇高を経て相模女子大を卒業。85年4月に東洋水産に入社(第一研究開発部 スープ開発業務)、2016年の同社取締役、13年に同社総合研究所長、18年から同社常務取締役を務める。