prime

1か月以上、ネットも電話も使えない NTTの通信障害なぜ長期化? “髪の毛の細さ”光ケーブルつなぐ現場


1か月以上、ネットも電話も使えない NTTの通信障害なぜ長期化? “髪の毛の細さ”光ケーブルつなぐ現場 通信障害の復旧工事にあたる作業車(車の前方には「災害復旧班」の車両幕が掲げられている)=4日午前10時40分、西原町上原
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 8月上旬、沖縄地方に接近した台風6号は、一度通過した後、Uターンして再び襲来するというまれな進路をたどり、県内全域に大きな被害をもたらした。停電や断水に加え、県民生活に影響を及ぼしたのは固定電話とインターネットの通信障害だ。襲来から1カ月がたっても、障害が続いているという問い合わせが琉球新報に複数寄せられている。なぜこれほど復旧に時間がかかるのか―。読者の疑問に答えるべく復旧工事を取材した。

 うるま市の男性(79)は8月3日から自宅の固定電話とインターネットが使用できない状態が続いている。9月6日現在も復旧していない。「インターネットが使えず不便だ」と不満を語る。 NTT西日本沖縄支店によると、約1万4600件の故障申告が寄せられ、5日現在、そのうち約1万3000件は修理が完了した。全国から600人の作業員と200台の作業車両を応援動員し、残る1600件の復旧作業を急ぐ。NTT東日本グループを含めた広域支援を動員したのは5年ぶりだ。

 NTTの通信ケーブルは、通信ビル(局舎)から最寄りの電柱を通り、電柱から「引き込み線」で家庭に接続する。この引き込み線の故障が多発したのが、障害が長期化している要因という。

 引き込み線の工事現場を訪ねると、作業員は高所作業車に乗り、電柱の上にある黒い箱を開けていた。箱は「クロージャー」と呼ばれ、各家庭につながる通信線が収容されている。無数にあるケーブルのうち、切れているケーブルはどれか見た目には分からない。作業員は試験用信号を流して1本1本確認する。さらに、髪の毛程度の細さの光ケーブルを正確につなぎ合わせる。熟練の技術が必要な工事だ。 1件当たりの修理時間は1時間程度、被害が大きい場合は4~5時間かかることもあるという。そのため、作業員1人が工事できるのは1日4~5件が限界だ。故障申告が増えても、工事件数は簡単に増やせない。

 うるま市の男性に、工事の大変さで復旧に時間がかかっているという取材結果を伝えると、「大変なのは理解した」と返答があったが、固定電話が通じず、ネットも使えない状況は変わらない。「1日でも早く復旧してほしい」と語った。

 これらの声に、NTT西日本沖縄支店は「長期間ご不便をおかけしていることをおわび申しあげたい」と陳謝し、「平時のケーブル保守点検の強化や災害時におけるNTTグループの支援体制の活用など、強いインフラを目指していく」と語った。

(渡真利優人)

友だち追加