沖縄選出議員ら敗訴確定 国会召集訴訟、最高裁が上告棄却  裁判官1人だけ「違法」と反対意見


沖縄選出議員ら敗訴確定 国会召集訴訟、最高裁が上告棄却  裁判官1人だけ「違法」と反対意見 最高裁判決を「大きな成果」と受け止めた訴訟原告の国会議員らと代理人弁護士=12日、最高裁正門前
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 安倍内閣が2017年、臨時国会の召集要求に約3カ月応じなかったのは憲法違反だとして、県選出の国会議員らが国に損害賠償などを求めた訴訟3件の上告審判決で、最高裁第3小法廷(長嶺安政裁判長)は12日、原告側の上告を棄却した。原告側敗訴の一、二審判決が確定した。裁判官5人中4人の多数意見による結論。一方、行政法学者出身の宇賀克也裁判官は「特段の事情が認められない限り、違法であるといわざるを得ない」などと反対意見を付けた。

 臨時国会の召集義務を定めた憲法53条に関する最高裁の初判断となった。53条は衆参いずれかの4分の1以上の議員が要求すれば、内閣は臨時国会の召集を決定しなければならないと規定。要求後、内閣がどの程度の期間までに召集すべきかは明示していない。

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 長嶺裁判長は53条の召集要求を「一定数以上の議員に対し権限を付与」したものと位置付け、個々の国会議員の権利や法律上の利益を保障した規定ではないと指摘。召集遅滞でただちに議員活動の権利などが侵害されるともいえず、遅滞を理由にした損害賠償請求はできないと判断した。

 宇賀裁判官の反対意見は要求から召集までの合理的期間について、自民党による12年の憲法改正草案や地方自治法の臨時議会招集規定と同様に「20日あれば十分と思われる」と具体的に言及。特段の事情がない限り、召集遅延は違法として賠償命令が相当だと述べた。

 原告ら野党は17年6月、森友学園や加計学園を巡る疑惑追及を目的に臨時国会の召集を衆参両院に要求。いずれも「4分の1以上」の要件を満たした。安倍内閣は9月に召集して冒頭に衆院を解散し、審議の機会はなかった。

 訴訟は那覇、東京、岡山の3地裁に起こされ、原告側は疑惑に関する国会質問ができなくなるなど「議員個人の権利が侵害された」と主張。一、二審判決は、内閣の臨時国会の召集義務は「国の機関」としての国会議員に対して負い、議員個人に対してではないため権利侵害に当たらないなどと退けた。
(共同通信)