稲わら不足で綱作りがピンチ… 糸満大綱引の小綱編みに植物「ベチバー」が活躍


稲わら不足で綱作りがピンチ… 糸満大綱引の小綱編みに植物「ベチバー」が活躍 提供されたベチバーを使って小綱を編む参加者=17日、糸満市の新屋敷公民館前
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 【糸満・恩納】今月29日(旧暦8月15日)に4年ぶりに開かれる糸満大綱引に向けて、糸満市内10カ所で17日、小綱作りが行われた。わら不足を補うために恩納、糸満の両市村産のベチバー約800キロ分を初めて導入した。ベチバーはイネ科の植物で、赤土流出対策のため畑の周囲に植えられている。乾燥させたベチバーの感触に参加者は「わらと遜色ない」と感心しつつ、協力して長さ110メートルの小綱を編んだ。

 糸満大綱引行事委員会(上原裕常委員長)によると、わらは以前は金武町屋嘉から10トン全量を取り寄せていた。しかし近年は減反などの影響で確保が困難になり、約8割を中国産に頼っていた。

 今年は、大綱引を中止した昨年に購入し保管していた中国産7トンだけでは足りず、県赤土流出防止プロジェクトのベチバーを使った綱作りの取り組みに着目した。同プロジェクトに参加する恩納村と糸満市からのベチバーの提供が決まった。

 17日に糸満市の新屋敷公民館で行われた贈呈式で、両市村から行事委員会側にベチバーが提供された。恩納村農業環境コーディネーターの桐野龍さん(46)は「手際よく綱を編み上げる様子に感動し、ベチバーの可能性も感じた。大綱引に活用することで、ベチバーを環境保全だけでなく伝統継承やわら不足の解消、農家の育成につなげられれば」と語った。

 上原委員長(74)は「ベチバーは固くて長さも十分あり、編みやすいと感じた。4年ぶりの大綱引を成功させ、伝統を次世代につなぎたい」と話した。行事委員会は来年以降、ベチバーの安定供給が確認できたら購入して、継続使用したい考えだ。 (岩切美穂)