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研究テーマは「とんじゅるあいこー」 学術誌にうちなーぐち翻訳の論文が掲載 OISTチームが初の試み


研究テーマは「とんじゅるあいこー」 学術誌にうちなーぐち翻訳の論文が掲載 OISTチームが初の試み 学術誌「Integrative Organismal Biology」に掲載されたうちなーぐち翻訳の研究要旨の一部(同誌のウェブサイトより)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 学術誌「Integrative Organismal Biology」に掲載されたうちなーぐち翻訳の研究要旨の一部(同誌のウェブサイトより)「とびはねるアリ」はうちなーぐちで「とんじゅるあいこー」。沖縄科学技術大学院大学(OIST)は14日、体長の何倍も跳躍できるアリの種の生態メカニズムを解明した研究論文の要旨を、うちなーぐち(沖縄語)に翻訳し、学術誌に掲載されたと発表した。OISTによると、学術誌にうちなーぐちが使用されるのは「おそらく初めて」という。

 うちなーぐちによる要旨は学術誌「Integrative Organismal Biology」に掲載された。ウェブサイトでは、英語の次にうちなーぐち、日本語、カザフ語、ドイツ語の順で並ぶ。

 研究では、跳躍するアリが他の昆虫とは違うメカニズムを持ち、胸部の特定の筋肉が再編成されて拡張することを発見した。研究担当のエバン・エコモノ教授が、研究を英語以外の言語で紹介する際に、うちなーぐちで翻訳することを思いついたという。

 翻訳は、学内でうちなーぐちの認知度を高めようと活動している職員の松田美怜さんと知花千亜希さんが担当した。言語学者の指導の下、両親や身近にいる高齢者の協力で作業を行った。

研究要旨をうちなーぐちへ翻訳したOIST職員の松田美怜さん(左)と知花千亜希さん(OIST提供)

 松田さんは「沖縄とのつながりを再確認する作業だった」と話し、翻訳を通して「科学的用語などの語彙(ごい)数が少ないことが分かった。『筋肉』や『断面積』は辞書に載っていなかった」と言語の継承の難しさを実感。知花さんは「うちなーぐちを科学分野などさまざまなシーンで取り入れることで、新たな道が開けることが、今回のプロジェクトで示された」と意義を語った。 (慶田城七瀬)