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人工子宮でサメ「出産」 美ら島財団が世界初 希少種保全の活用に期待


人工子宮でサメ「出産」 美ら島財団が世界初 希少種保全の活用に期待 人工子宮から「出産」したヒレタカフジクジラ(提供)
この記事を書いた人 琉球新報社

 【本部】沖縄美ら島財団は28日、人工子宮の中で育成した深海ザメの一種「ヒレタカフジクジラ」を安定的に海水環境に移し、世界で初めての「出産」に成功したと発表した。同財団は、今回の成果が人工子宮技術の実用化に向けて大きな進展をもたらし、希少種の保全にも活用できるとしている。

 同財団はサメの早産胎仔(たいし)の保育を目的に、2017年から母体外の人工子宮装置の開発に取り組んでいる。装置はサメの体液を模した人工羊水で満たされており、20年には5カ月間育成して出生サイズにまで達したが、海水への急激な環境変化が課題として残っていた。

 今回発表したのは2度目の挑戦で、21年11月の育成開始から5カ月の間で人工羊水を段階的に海水に置き換え、海水の割合を徐々に100%に近づけた。海水が入った別の水槽に移った段階を「出産」とし、泳ぎ始めた仔(こ)ザメを7カ月間安定的に飼育することができた。

実験に使った人工子宮装置(提供)

 栄養源については、「出産」前には自身が持つ卵黄から栄養を吸収するのに対し、「出産」後は口からえさを食べるため、消化不良が起きやすいという。研究では負担の少ない魚とエビのペーストを与え、順調に栄養を吸収し成長していることを確認した。

 研究成果は28日、国際学術誌「PLOS ONE」電子版に掲載された。

 代表研究者で同財団総合研究所の冨田武照さんは「人工子宮の実用化に向け大きな一歩となった。サメの保全など世界的な問題の解決や水族館の医療技術に貢献したい」と話した。 (増田健太)