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【深掘り】口裏合わせ”偽装工作”にほころび 現金受領を認めた久高・前那覇市議長 急展開の背景 沖縄


【深掘り】口裏合わせ”偽装工作”にほころび 現金受領を認めた久高・前那覇市議長 急展開の背景 沖縄 関係先の家宅捜索に向かう捜査員ら=5日午前7時すぎ、那覇市内
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 那覇市有地の所有権を巡り、2021年2月に那覇市議会の議長室で不動産コンサルタント会社代表の男性から那覇市議で前議長の久高友弘氏(75)らへの現金5千万円の受け渡しがあった件は、久高氏らが本紙取材に4千万円の受け取りと収賄を認めるような発言をしたことで局面が変わった。土地所有者の後見人を務める女性(70)と久高氏は当初、口裏を合わせて久高氏の現金受領を否定していたが、捜査が進むにつれて“偽装工作”がほころび、認めざるを得なくなっていったという構図が浮かび上がる。

3千万円の領収書

 今年3月上旬。後見人の女性や関係者によると、議長室で5千万円の授受があったと報道された日に、久高氏や女性らは、女性が全額を受け取った形にしようと示し合わせた。そこから、つじつま合わせが始まった。

 その一端が所有権回復を目指す土地の権利関連資料の買い戻し費用に見られる。久高氏や女性はこれまでの取材に、費用は議長室で受け取った5千万円から3千万円を捻出したと説明していた。

 だが関係者によると、費用の出どころは女性と旧知の男性が「投資」として女性に拠出したもので、議長室の5千万円とは別物。授受問題の報道を受け、久高氏らが男性に「3千万円の領収書を書いてほしい」と依頼したこともあったという。“偽装工作”への加担を嫌った男性は依頼を断った。県警は、この3千万円のやり取りを偽装するために用意された領収書を押収したという。

事態一変

 疑惑の発覚後、久高氏や女性は県警の任意聴取やメディア取材に、女性が全額受領したとの説明を重ねる一方で、周囲の関係者に働き掛け、5千万円の使途について帳尻合わせを図ったという。だが、県警が5日に久高氏や女性の自宅を含む関係先の一斉家宅捜索に着手し、捜査を本格化させると事態は一変する。

 捜査関係者などによると、久高氏らの周囲の関係者が県警の聴取に久高氏の授受を認める証言をしていったことで、女性も久高氏も説明に窮し、現金受領を認めざるを得なくなったという。

 女性は「これまでうそをついてきた。申し訳ない。今となれば(久高氏に)裏切られた思いもあるが、一方で恩もある。(事実を話すことに)罪悪感もあった」と目頭を押さえて語った。

 久高氏は取材に議会対策としての現金受け取りを認めるような発言をする一方、使途について「忘れている部分もある」などと話し、いまだ全容の輪郭はぼやける。県警は押収した資料を解析し、久高氏が受け取った現金の使途や、現金受領による議員としての職権行使の有無などの解明を進める方針だ。