気温29度。19日午前、石垣市の空は晴れ渡り、強い日差しが照り付けた。日米共同訓練の一環で、陸上自衛隊の輸送機V22オスプレイが石垣市の新石垣空港の西側上空に姿を現した。青空を切り裂くように迫ってくる灰色の機体に報道陣が一斉にカメラを向ける。機体は「ドドドドド」と地鳴りのような低周波音を響かせてシャッター音をかき消し、午前10時50分ごろ着陸した。抗議に来た市民は「異常だ」と怒り「やるせない」と落胆した。
オスプレイの着陸後、機体後方のハッチ付近に自衛隊と米軍双方の関係者が集まった。負傷者搬送訓練の一環で、担架に負傷者を乗せ、米軍と自衛隊が共に担架を持ち上げ機体内に運び込んだ。時折、笑みをこぼすなど、緊迫感はなかった。
一方、空港西側に集まった市民は「日米共同訓練反対」と書いた横断幕をフェンスに縛り、抗議の意思を米軍と自衛隊に示した。
「不安がかきたてられるよ」。フェンス越しに機体を見詰めていた農家の嶺井善さん(57)はつぶやいた。自身の畑から、麦わら帽子をかぶり農作業着姿のまま駆け付けた。民間空港に軍用機が駐機している光景に「平和とは思えない」と声を落とし、「訓練は基地内でやればいい」と望んだ。
「オスプレイ来るな」と書いたプラカードを持っていた宮良純一郎さんは(73)は「私たちの生活を壊すな」と、抗議の拳を空に突き上げた。
これまで石垣駐屯地配備や米海軍掃海艦の入港など、日米の軍事拡張の動きに何度も繰り返し抗議の声を振り絞ってきた。心が折れそうになることもあるが「住民が声を上げ続けることが大切だ。慣れてしまっては78年前と同じ状況になってしまう」と危機感を示した。
同じく、多くの現場で抗議の声を上げ続けている藤井幸子さん(75)も「軍事力ではなく外交交渉が必要だ」と訴え、マイクをぎゅっと握り締めた。
(八重山支局長・照屋大哲)