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【深掘り】陸自オスプレイの石垣飛来 「成功」きっかけに防衛省が描く今後とは


【深掘り】陸自オスプレイの石垣飛来 「成功」きっかけに防衛省が描く今後とは 新石垣空港に着陸した陸上自衛隊のV22オスプレイ。傷病者の搬送訓練を行う自衛隊や米軍関係者ら=19日正午ごろ、石垣市(又吉康秀撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 日米共同訓練の一環で陸上自衛隊のV22オスプレイ1機が石垣島に飛来した。県による自粛要請に反して強行した格好だが、県内への初飛来にして民間空港の利用という前例もつくる結果となった。今回の「成功」をきっかけに陸自は今後、さらに県内での訓練実績を重ねたい構えだ。先島地域での米軍オスプレイの訓練につながる可能性もある。

 陸自は以前から県内でオスプレイを使った訓練を実施したいと望んできた。共同訓練「レゾリュート・ドラゴン23」での初使用を計画する中で、直前の8、9月には海兵隊のMV22オスプレイの墜落死亡事故、陸自機も含む緊急着陸など問題が続いた。19日の訓練実施を受け、陸自関係者の一人は「最初が最も難しく、重要だ。なんとか実行できてよかった」と語った。

 陸自のオスプレイは現在、千葉県の木更津駐屯地に暫定配備されているが、2025年からは佐賀県に移って運用される予定だ。有事になれば隣接する長崎県に駐屯する離島奪還部隊の陸自水陸機動団を乗せて南西地域へ展開することが想定される。

 だが、今回の訓練で実施したのは部隊の機動展開ではなく、患者の後送訓練だった。ある防衛省関係者は「最初で水陸機動団を乗せて飛来するよりは受け入れやすいだろう」と語った。今後、内容を変えながら県内でオスプレイの訓練を繰り返すとみられる。

 一方、別の関係者によると、米海兵隊のMV22オスプレイも先島で訓練する構想がある。これまでも緊急着陸などでたびたび飛来しているが、各種訓練を重ねることで自衛隊との連携強化を図りたい考えだ。

 防衛省関係者は今回の陸自オスプレイの飛来について「海兵隊のオスプレイ飛来への地ならしとして、地元の反応も見ていた。問題なく運用できた」と強調した。

 11月15日にはキャンプ・ハンセンに駐留している第12海兵連隊が改編され、島しょで分散展開する「海兵沿岸連隊(MLR)」となる。有事にはオスプレイでの展開も想定される部隊だ。先島地域に駐屯する陸自部隊との連携が見込まれる。

 米海兵隊は今回の共同訓練にも既存の第12海兵連隊がMLRに近い役割で参加すると説明しており、南西諸島での訓練拡大は今後も進みそうだ。

 県や県政与党関係者は、民間インフラの利用拡大を図る自衛隊の動きを警戒する。県政与党県議の一人は「これを機に、民間インフラの訓練での使用が常態化しかねない」と懸念を示した。

 県関係者は防衛力強化に向け政府が進めようとする民間インフラの整備について「国民保護のために必要だというが、本当の目的は有事に自衛隊が使うためだろう」とみる。住民避難で空港や港湾を使うが、自衛隊や米軍も使うことが想定されれば相手国からは「軍事利用とみられ、攻撃目標にもなりかねない」とリスクも指摘した。

 (明真南斗、知念征尚)