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歯ブラシケースや万年筆…「旧海軍壕」の未公開エリアから遺留品、遺骨が多数見つかる 沖縄・豊見城市


歯ブラシケースや万年筆…「旧海軍壕」の未公開エリアから遺留品、遺骨が多数見つかる 沖縄・豊見城市 旧海軍司令部壕での遺骨・遺留品収集の様子=10月29日、豊見城市豊見城
この記事を書いた人 Avatar photo 岩崎 みどり

 豊見城市にある旧海軍司令部壕の未公開部分150メートルの発掘、遺留品調査が21~29日に行われた。9日間で県内外からボランティア延べ300人ほどが参加した。最終日の29日は45人ほどが、壕内を埋めている土砂から遺骨や遺留品を取り出す作業に汗を流した。

 今回の調査で「我昇」と彫られた印鑑など多数の遺留品、遺骨が見付かった。初めて参加した学生は「遺骨を見付け、遠くにあった戦争を近くに感じた」と話した。

名前の書かれた遺留品。歯ブラシケースや万年筆、せっけんケースなど


 遺骨収集のNPO法人「空援隊(くうえんたい)」が主催。昨年10月に同壕で初めて調査を行い、今回で4回目。専務理事の倉田宇山(うさん)さんは「まだたくさんの遺留品が出る。来年1月に最後の作業の予定で、できるだけ進めたい」と話した。

 今調査では、歯が残る顎、すねの骨2本をはじめ大小多数の遺骨、歯ブラシや食器などの遺留品、実弾などが見付かった。佐藤、小禄と書かれた万年筆、山科秀夫と書かれた歯ブラシケースなどが見付かった。他にも薬びんなどの医療用品も多く、鉄材不足のため作られた陶製手りゅう弾は破損のない状態で見付かった。

 遺留品は壕の管理事務所に引き渡され、名前が書かれた物は遺族を探す。遺骨は県の戦没者遺骨収集情報センター、実弾など危険物は警察に引き渡される。これまでに見付かった遺留品の一部が、同壕の入り口に展示されている。
 作業は壕内に堆積した土砂を外に運び出し、ふるいに掛けて遺骨や遺留品を探す。残った土は袋に入れて土のうにするという流れ。これまでに土のう13000袋を超える土が掘り出されている。

旧海軍司令部壕の未公開部分

 糸満市から参加の新垣元さん(70)は、母・宏子さん(95)の兄が海軍所属で県内で戦死した。遺骨は見付かっていない。「伯父はここにいたのではないか。県内外の人が作業してくれているので、私も元気なうちは頑張りたい」と力を込めた。

 名桜大学のボランティアサークル所属の村井愛深さん(20)と石橋嶺さん(19)は共に県外出身。土砂をふるいに掛けながら「遺骨を取り残さないよう気をつけている」などと話した。 

(岩崎みどり)