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現場の「きつい」をロボットで解消 ビジネスの新地平を切り開く県出身者 CuboRex代表取締役の嘉数正人さん<県人ネットワーク>


現場の「きつい」をロボットで解消 ビジネスの新地平を切り開く県出身者 CuboRex代表取締役の嘉数正人さん<県人ネットワーク> 「現場のきついをロボティクスで解消する」とロボットビジネスで新地平を開拓する嘉数正人さん
この記事を書いた人 Avatar photo 斎藤 学

 凹凸が激しい田畑や建築、災害の現場。それに未舗装の土地を「不整地」という。人手不足が深刻な国内で、整地するには目もくらむような予算や人手の手配の算段がちらつき頭も痛い。そんな課題を解消する一手を嘉数正人さんが提示する。人力に替わって着眼したのはロボット。人に役立つロボティクスの分野から時代に即したビジネスの新地平を切り開いている。

 少年時代の自宅には兄が取り組む電子工作の部品が転がっていた。一方で自身は「林の中に秘密基地をつくるのが楽しかった」と振り返る。科学と自然の交錯する環境が理系の才能を育んだのかもしれない。物理が得意分野だ。

 高校時代はドラムをたたく一方で、校内の雰囲気にのまれるように大学受験を自然と意識した。いざ進路を考えると、工学へ関心が傾斜していく。その一方で、起業、経営にも興味が尽きない。融合させたような学びの分野をリサーチすると、進学先はおのずと絞られ、都内の大学へ勇躍した。

 見込み通り、起業の原点は大学時代にある。今でこそ街中で見掛ける電動キックボード。実は10年ほど前に電車に乗せられる電動バイクを開発した。「授業カリキュラムにはない課外活動で調べて造った」という。法定審査もクリアし実際に通学にも使っていた。

 先見の明があり過ぎたか。ビジネスへの転化を試みたが、法整備など時代環境は整っておらず、メジャー化を阻んだ。「コスト面などから22歳でできるビジネスじゃないな」。その時は涙をのんだ。「アイデアの実証はできても、ビジネスにできるかというと幾重も壁があった」

 とはいえリスタートも早い。大学の卒業を控え、Hope Fieldを15年に創業する。到来する環境変化を精緻に先読みする力がここでも発揮された。今年は熊やイノシシなどが街中に出没、人的な被害も報告されたが、創業の15年時点で獣害の到来を見通していた。お茶農家の跡継ぎと共同し、獣害対策の効率化、IT化などの事業に進出した。ところがここでも大手、競合プレーヤーが現れ撤退を余儀なくされた。

 それでも起業意欲は衰え知らず。企業を2社経て、CuboRexの代表に今年就任した。

 日本国内に田畑は約437万ヘクタール。一方で耕作放棄地も年々増加の一途だ。建築着工の現場は年間で約1.1万ヘクタール現出しているという。ビジネスフィールドはそれだけ拡大する。

 運搬一輪車の電動化キットをはじめ、既に開発、導入実績は複数あり、さらに新規開発も来年以降に導入予定だ。「現場の効率化、省力化、自動化を見越してニーズを拾い上げる。農業分野から始まり、今は建設からも引き合いがあり、移行しようとしている」

 建物や道路、橋梁(きょうりょう)、上下水道など社会インフラの耐用ももはや喫緊の課題だ。特に人が入れない天井裏やパイプの中など「局所環境ロボット」の開発に注力する。「世の中から求められる成長産業との確信がある。現場のニーズに合ったものづくりで勝ち抜く」ときっぱり。「現場の『きつい』をロボティクスで解消する」。確かな分析力で先を見詰める。

 (斎藤学)

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 かかず まさと 1993年11月生まれ。那覇市国場出身。古蔵中を経て那覇国際高。2012年に首都大学東京(現東京都立大学)に進む。16年に東京工業大学大学院に進んで技術経営を研究し、17年に中退。19年からはCuboRex(キューボレックス)、23年に代表取締役。