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玉城知事の判断に県民から賛否の声 識者が語る当面の「唯一の解決策」とは 辺野古「承認せず」表明


玉城知事の判断に県民から賛否の声 識者が語る当面の「唯一の解決策」とは 辺野古「承認せず」表明 米軍キャンプ・シュワブのゲート前に座り込んで抗議する人=25日午後、名護市辺野古
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 辺野古新基地建設を巡り、福岡高裁那覇支部が設計変更の承認を県に命じたことに対し、玉城デニー知事が「承認は困難」と判断したことについて、県民から賛否の声が上がった。埋め立ての合理性や公益性について疑念は拭えないとして、改めて辺野古移設の断念を求める意見もあった。

 名護市汀間に住む松田藤子さん(83)は「断ってくれて良かった。とにかく受け入れないでほしいし、今こそ沖縄が一丸となって立ち上がらないといけない」と強調した。国の代執行について「世界から注目される大事な海を埋め立てることは、理にかなわない。地形が深くなっているから工事もできないはずだ。自然に畏敬の念を持たなければいけない」と懸念を示した。

 宜野湾市新城に住む米軍普天間基地騒音被害第2次訴訟原告団の根路銘安正事務局長(83)は、日々の基地被害から解放されたいという切実な思いを抱く。「宜野湾が静かに、安全になるからといって辺野古に持っていけとわれわれには言えない。判決でやっと進むと思った」。行政の観点から知事の判断に疑問を呈し、対話を求める間も「普天間周辺の住民は被害を受ける」と訴えた。

 沖縄平和市民連絡会の真喜志好一さん(80)=那覇市=は「沖縄の人の暮らしと自然を守るために正しい判断をした」と評価した。代執行について「県の地方自治の権利を奪うことは沖縄差別だ。普天間基地の危険性除去は閉鎖・返還であり、政府が推し進める辺野古移設ではない」と語気を強めた。

 埋め立ての公益性が「ない」と言い切るのは国際政治論が専門の豊下楢彦元関西学院大教授(78)。11月に在沖米軍幹部が普天間を維持したい考えを示したことを踏まえ、「辺野古に基地ができれば危険性が除去されるという構図は崩壊した」と指摘。今回の知事の決定を「当然の判断だ」とみる。当面の「唯一の解決策」は政府が主張する辺野古ではなく、米軍に国内法を順守させることだという考えを強調した。

(増田健太、名嘉一心、渡真利優人、中村万里子)