米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、県は23日、沖縄防衛局に大浦湾側に生息するサンゴ類の移植を許可した。
これまで、軟弱地盤の改良工事に伴う設計変更の不承認を不許可理由に掲げていたが、代執行訴訟で敗訴した県は“闘う理由”を失い、従うしかなかった形だ。玉城デニー知事が同日出したコメントには「辺野古新基地建設に反対する」という自身の政治姿勢を強調する文言が2回登場し、行政の長としての立場を取らざるを得なかった悔しさをにじませた。
採捕を巡っては、国から23日までに許可するよう「指示」を受けていた。従わなかった場合は、国が県に代わって強制的に手続きを行う「代執行」に向けた訴訟を提起する見込みだったが、最高裁判決を踏まえて、県は許可する方向で調整を進めていた。ただ、最高裁の決定について玉城知事は「司法が何らの具体的判断も示さずに門前払いをしたことは、極めて残念だ」としていた。
県は2021年にも約4万群体のサンゴ類の移植を生残率向上の措置を講じることなどを条件に許可した。一方、県が示した条件に反して沖縄防衛局は翌日に移植作業を強行し、県が許可を撤回した経緯がある。そのため、今回はさらに作業報告を求めるなど条件を追加しているが、沖縄防衛局が県の条件を守る保証はない。
環境監視等委員会の報告によると、前回移植したサンゴのサンプル調査の定着率は69%だったという。
県関係者は「作業状況を細かく報告してもらうことでしか分からないが、気象条件などサンゴが適切に移植する環境で作業しているのか細かく確認していきたい」と語った。
今回の約8万4千群体のサンゴ類は許可期間である1年間以内で全移植が完了する予定と見られる。
(新垣若菜)