米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、県は23日、沖縄防衛局から申請のあった大浦湾側に生息するサンゴ類の特別採捕(移植)を許可した。県の許可を受けて、国は埋め立て対象海域のサンゴ約8万4千群体の移植を進める。沖縄防衛局が工事について有識者の助言を得る「環境監視等委員会」は21日、これまで国が進めてきたサンゴ移植について「移植方法は妥当」と結論付けたが、サンゴに詳しい専門家からは疑問の声が上がった。
同委員会の報告書では2021年度に移植が始まった小型サンゴ類の2年後モニタリング調査の結果につて、移植したサンゴ類群体数の生残率を69~92%とした。元々生息していたサンゴ類の減少幅とも大きな差がないと報告した。
この報告書について、サンゴ移植に詳しい東京経済大学の大久保奈弥教授は、移植後に減少した種ごとの具体的な数値や属別の生残率が示されていないと指摘。また、高水温、ストレス耐性のあるキクメイシ属やハマサンゴ属に重点を置いた示し方に疑問を呈した。
報告書は、代表的な小型サンゴ類で移植の影響を最も受けやすいミドリイシ属の再生産を「23年6月5日に確認」と記載しているが、群体数など詳細なデータは示していない。
大久保教授は、同委員会が結論付けた「加入したサンゴ類の今後の成長が見込まれる」は希望的観測に過ぎないと批判し、移植先での「動的安定性が期待できるとの評価こそが全く期待できない」とした。
工事が進む辺野古崎沿岸や大浦湾の沖合で潜水調査してきた日本自然保護協会の安部真理子主任は移植サンゴの減少に「移植先のサンゴも死んでいると主張するが、死んだのであれば、移植の方法や時期、場所の選定が間違っていたということになる」と指摘する。
安部さんは1月に大浦湾のリーフチェックを実施した際に臨時制限区域外の移植サンゴが接着剤に接する部分から死んでいるのを確認した。移植を許可した県に対して「写真などを事業者に要求して確認するべきだ。今後移植される8万群体をどのように確認するのか」と投げ掛けた。
(小浜早紀子、慶田城七瀬)