小説部門に佳作2編、創作昔ばなしは佳作1編 両部門とも正賞なし 琉球新報児童文学賞


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 第35回琉球新報児童文学賞の最終選考会が20日までに、那覇市の琉球新報社で開かれた。短編児童小説部門、創作昔ばなし部門ともに正賞の該当作がなかった。両部門ともに正賞がなかったのは、2021年以来。

 佳作に短編児童小説部門で上田真弓さん(54)の「山羊と雪」と金城圭さん(67)の「おばあちゃんに会いに」の2編、創作昔ばなし部門で比嘉稔さん(64)の「あかり屋の弟子」の1編がそれぞれ選ばれた。

 今回は短編児童小説部門に25編、創作昔ばなし部門に11編の計36編の応募があった。

 選考委員は齋木喜美子氏(関西学院大教授)、新垣勤子氏(児童文学作家)、小嶋洋輔氏(名桜大教授)が務めた。佳作作品には、物語の独創性や表現力の美しさなどを高く評価した。一方、正賞の該当作がないことについて、作者による読者層の設定、物語の構成などに対する課題を指摘した。

 贈呈式は2月14日、山之口貘賞、琉球新報短編小説賞、歌壇俳壇の文学三賞と合同で那覇市の琉球新報ホールで開く。開場は午後6時、開式は午後6時半。

(当銘千絵)

 佳作の作品の概要と選考委員のコメントは次の通り

 児童小説部門で佳作となった上田真弓さんの「山羊と雪」は「ひいばあちゃん」の沖縄戦の体験について「僕」が語りながら、宮沢賢治の銀河鉄道の夜と重ねていく幻想的な物語。「構成、文体ともにすばらしく、新しい『沖縄戦』の描き方が見えた」(小嶋洋輔選考委員)

 同部門でもう一つの佳作となった金城圭さんの「おばあちゃんに会いに」は、幽霊が見える少年が題材。「おばあちゃんがサーダカ生まれの孫の生きづらさに寄り添い、不安を緩やかに溶かしていく過程が丁寧に描かれていた。劇的な展開はないが、沖縄らしい日常の生活の中に喜びと豊かさがあることを感じさせる」(齋木喜美子選考委員)

 創作昔ばなし部門佳作となった比嘉稔さんの「あかり屋の弟子」は、空に浮かぶ星を捕ることをなりわいとする物語。「発想に独創性があり、仕事が魅力的。ユーモラスな場面や豪快な展開がありながらも、幻想的で美しい情景がちりばめられている。首里の弁ヶ岳が現在の高さとなった理由を語る、昔話らしい由来譚である」(新垣勤子選考委員)

(※1月25日付文化面に選評を掲載します)