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イタリアやドバイをヒントに沖縄に可能性 クラシックカーラリー開催の矢口可南子さん<県人ネットワーク>


イタリアやドバイをヒントに沖縄に可能性 クラシックカーラリー開催の矢口可南子さん<県人ネットワーク>
この記事を書いた人 Avatar photo 斎藤 学

 左右に家々が連なる路地の奥に今も心の原風景となった家がある。那覇市長田の一角。隣近所は知り合いばかり。幼児期まで過ごしたが、今も帰省すると叔父叔母のいる、その家に立ち寄る。「ああ、また帰ってきた」。今も変わらぬ故郷の光景は心がなごむ。生きる張り合いを育む。

 父母の仕事に伴い幼稚園は中途で退園。東京都世田谷での生活が始まった。小学校に通うようになると夏休みは“実家”に帰るのが恒例。帰省のたびに叔父らが空港に出迎えた。育ちの年月は都内が大半となったが、沖縄は、久米島出身の母のふるさと。寄せる心は母と親類、隣近所の人に育まれた。

 中学校に進級すると、自立と自律の道を探り始めた。高校、専門学校では即戦の知恵を身につけるべく簿記会計の習得に励む。「手に職」は実社会で最強の武器だ。スキルを生かし証券会社へ入社し9年間、お金の流れをつぶさに見詰めてきた。金融の最前線にいる安定職だったが、持ち前の自立心が起業へと駆りたてた。

 香水ブランドの起業を発案。専門知識を深める一環で医師らへも知見を仰いだのが転換期。「趣味でクラシックカーにのめり込む人がいて。イベントにも誘われて参加すると。そこは映画の世界だった」。自らの天職は、意外な場面で見つかることもある。クラシックカーに魅せられて一躍、販売業者へ転職した。

 そして非なるものでありつつ、自らのルーツ・沖縄とクラシックカーとをリミックスして実現したのがクラシックカーラリーイベントの「ジロ デッリゾラ沖縄」だ。3月8~10日には宜野湾市を起点に開催する。

 ジロ デッリゾラとはイタリア語で「島めぐり」の意。ラリーは2016年から開催され、地道な取り組みが功を奏して国際的な認知度も上がりつつある。イタリアのシチリア島のクラシックカーイベントと姉妹提携が実現したのだ。

 クラシックカーは多彩な人知の結晶だ。「内装や外装を含めメカニックな専門職の視点の一方で歴史的な視点もある」。その秘める国際的なポテンシャルで地道な布石を打っていくのが経済振興には肝要と考える。中東の小国ドバイを例示し「多国籍な人々の往来で経済を回しているのは沖縄も参考になる。そして同じ可能性がある」。アジア、そして世界の接点としての沖縄を構想している。

(斎藤学)


 やぐち・かなこ 1982年10月、那覇市生まれ、東京育ち。証券会社に勤務した後、クラシックカー販売業者へ転職。クラシックカーイベントを2016年~19年まで4回開催した。20年に独立して「ジロ デッリゾラ」を23年に初開催。日伊間の自動車文化の国際交流を目指すラリーの2回目を3月に開催する。