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【記者解説】住民自治、在り方問われる 石垣の住民投票訴訟 「意思表明の権利」に目を向けるべき


【記者解説】住民自治、在り方問われる 石垣の住民投票訴訟 「意思表明の権利」に目を向けるべき 石垣市への自衛隊配備を巡る住民投票控訴審判決が行われた法廷=3月12日午後2時57分、福岡高裁那覇支部(代表撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 金良 孝矢

 沖縄県石垣市への陸自配備の賛否を問う住民投票を巡る地位確認の当事者訴訟で、福岡高裁那覇支部判決は、一審判決と異なる論理を使い市民側の控訴を棄却した。市民らの請求を受け市長が住民投票を実施しなければならないとした、市自治基本条例をつくる際の意思をないがしろにし、住民自治の在り方が問われる内容となった。

 市民側は自治基本条例の制定過程を踏まえ、同条例は市長に住民投票の実施を義務付けると主張していた。しかし、高裁判決は制定に関わり、住民投票の必要性を訴える関係者らの意見を踏まえても「思惑はともかく、関係者らが説明している立法意思を読み取ることはできない」と突き放した。

 高裁判決は一審判決のように訴えを門前払いにはしなかったが、「住民投票制度は間接民主制の例外」とも言及した。市民らが自治基本条例を踏まえ要件を超える1万4千人余の署名を集めて市長に実施を求めても、市議会が実施に賛成しなければ「例外」として切り捨てていいのか。

 市民側は上告する方針。上告審で最高裁は署名を重く受け止め、市民が意思表明する権利が奪われている現状に目を向けるべきだ。

(金良孝矢)