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石垣の住民投票訴訟 市民の提訴資格認めるも市の違法性は認めず 陸自配備巡り高裁で敗訴 沖縄


石垣の住民投票訴訟 市民の提訴資格認めるも市の違法性は認めず 陸自配備巡り高裁で敗訴 沖縄 福岡高裁那覇支部の判決を受け、「不当判決」などと書かれた紙を掲げる支援者ら=12日午後(喜瀨守昭撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 石垣市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票を巡り、条例の要件を超える署名を集めたにもかかわらず、中山義隆市長が実施しないのは市民の権利侵害だとして、市民3人が住民投票ができる地位にあることなどを確認する当事者訴訟の控訴審判決が12日、福岡高裁那覇支部であった。

 三浦隆志裁判長は、訴えを却下した一審判決とは異なり、市民らに訴訟提起の資格があると認めたものの、市の違法性は認めず控訴を棄却した。市民側は上告する方針。

 2023年5月の那覇地裁判決は、住民投票の実施を規定する市自治基本条例の条文(第27、28条)が削除されたことから訴えは不適法としていた。高裁の判決理由で三浦裁判長は、市民らの訴えは法的地位の確認に関する争いを解決するために「有効かつ適切な手段で、確認の利益があると認められる」と述べた。

三浦隆志裁判長

 一方で有権者が実施を請求でき、市長が実施しなければならないとする自治基本条例の第28条については、規定上の具体的内容が明らかになっていないなどと指摘。市長への実施義務付けや、有権者への請求権付与ではないと判示した。

 また地方公共団体では間接民主制を基本とし、住民投票制度はその「例外」と前置き。相当数の有権者から請求があったとしても、実施の可否は「議会が判断するものだ」とした。

 判決を受け、市民側の大井琢弁護団長は「条文を読めば、(住民投票の)権利が認められてしかるべきだ。守られるべき権利が守られず放置されている」と批判した。

 市民らは、自治基本条例の規定を超える署名を集めて18年12月、市長に住民投票条例制定を請求。同条例案は市議会に2度提出されたが反対多数で否決され、住民投票は実現しなかった。市民らは住民投票の義務付けを求める訴訟を起こしたが、21年8月に最高裁で敗訴が確定。市議会は21年6月に条例改正案を賛成多数で可決し、住民投票実施規定の条文を削除した。陸自石垣駐屯地は23年3月に開設された。