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【記者解説】「戦争」記述、国が許容 教育通した軍国化を懸念 25年度中学教科書検定


【記者解説】「戦争」記述、国が許容 教育通した軍国化を懸念 25年度中学教科書検定 自由社の公民教科書に記載される憲法9条に関する記述
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉数 陽

 現行の学習指導要領に基づく2回目の中学校教科書検定では、一部の公民教科書で安全保障政策に関する記述が増えた。
 自由社は日米地位協定の運用を協議する「日米合同委員会」について新たに項目を立てて説明し、戦後の安保政策に関する説明を手厚くした。
憲法9条に関する記述では「戦争の放棄」をうたった9条の解釈の一つとして、「自衛戦争は禁止していない」とし、続けてこの解釈が「日本政府の解釈である」と記している。

 2015年の安全保障関連法成立で、外国からの攻撃で日本の存立が危ぶまれる「存立危機事態」になった場合の集団的自衛権の行使を認めた。ただこれまで政府が「自衛戦争」の容認にまで踏み込んだことはなく、今回の検定で指摘がなかったことで「戦争」を国が追認したとも読み取れる。

 9条の記述を巡っては、9条の存在により「国土を防衛できない」と記した部分や「アメリカに対して軍事的隷属状態に置かれている」などと記した部分は検定で修正された。この点からも修正されなかった「自衛戦争」の記述が際立つ。

 前回の検定は21年だった。政府は直後の22年に安全保障関連3文書を閣議決定し、南西諸島の防衛力強化の方針を示した。こうした政府の姿勢が検定に及ぼす影響はなかったか。「戦争」に踏み込んだ記述を許容した国の姿勢からは、将来を担う子どもたちに軍事力強化の容認に導く意図も透ける。教育を通して軍国化を目指した「戦前」の轍(てつ)を踏むことがあってはならない。 (嘉数陽)