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姉の沖縄戦体験を絵本に 島で起きた悲劇「集団自決」も描く 渡嘉敷村の新垣さん「エツ子がつないだいのち」


姉の沖縄戦体験を絵本に 島で起きた悲劇「集団自決」も描く 渡嘉敷村の新垣さん「エツ子がつないだいのち」 姉悦子さんの沖縄戦体験を絵本にして阿波連小の児童に読み聞かせをした小嶺光枝さん(後方中央)=3月12日、渡嘉敷村立阿波連小学校
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 渡嘉敷村の新垣光枝さん(75)=旧姓小嶺=はこのほど、昨年亡くなった実姉(長女)の悦子さん(86)=埼玉県=が伝えた沖縄戦の記憶と島の悲劇「集団自決」(強制集団死)の体験を基にした絵本を作った。

 題名は「エツ子がつないだいのち ~死にたくないよう~」。28日の渡嘉敷村の慰霊の日を前に、阿波連小学校で12日、全児童対象にこの絵本の初の読み聞かせ授業が開かれた。

 絵本は渡嘉敷幼稚園の子どもたちの描いた感想画入りの見開き11ページで、構想から13年をかけて完成した。沖縄戦当時、国民学校1年生の悦子さんが体験した1944年10月10日の空襲から始まり、当時の家庭や学校生活、日本兵の駐屯、山小屋避難生活などが描かれている。

姉の戦争体験を絵本にした小嶺光枝さん

 45年3月26日に米軍が座間味村に上陸して沖縄戦が始まり、27日には渡嘉敷村に上陸。27日の夜、軍の命令で大雨の降りしきる中、悦子さん家族5人や住民らは一緒に集落内の避難小屋から島の北山(にしやま)に移動して「集団自決」に追い込まれ、父が手りゅう弾で命を絶とうとした。周囲の住民らが死のうとする様子を見た悦子が「こわいよ!死にたくないよう!」と必死に叫んだことで家族が生き延びたことや、戦後の様子などをつづる。

 阿波連小5年生の白須賀ひらりさんは「もし戦争になったら、私も光枝先生のお姉さんの悦子さんみたいな行動をしたいと思った」と感想を寄せた。

 新垣さんは「渡嘉敷幼稚園教諭在職中に姉の悦子が伝えてくれた戦争の記憶と島の『集団自決』の体験の話を基に、園児たちの感想画で『平和学習』の絵本を作り、平和と命の尊さを後世につなげたいとの思いで作成した。子どもたちにはこの絵本を基に平和学習、読み聞かせを今後も続けていきたい」と思いを話した。

 (米田英明通信員)