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幼児や高齢者…米軍基地フォスターのゲート前、10分超も足止め <検証 津波避難>5


幼児や高齢者…米軍基地フォスターのゲート前、10分超も足止め <検証 津波避難>5 米軍キャンプ・フォスター内を通って避難する人々=3日(徳田伝さん提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚

 3日午前9時1分の津波避難警報発表時、北谷町北前区自治会の徳田伝(つたえ)自治会長(69)は海沿いの北前公民館にいた。近隣にある米軍キャンプ・フォスター内高台への津波避難訓練に参加してきたこともあり、すぐに徒歩で基地に向かった。

 午前9時10分に北前ゲートに到着。基地内に入ろうとすると警備員に止められた。「待ってほしい。指示を受けていない」。警備員が基地側に確認するも許可はすぐ下りず押し問答が続いた。

 徳田会長は同16分、防災情報を共有するLINEグループに「キャンプ瑞慶覧(キャンプ・フォスター)の入り口まで来ている。まだ入れない」と投稿。同20分にも「まだです」とつづった。

 幼児連れの親子や高齢者らも徒歩で訪れ、総勢8人が立ち往生した。少なくとも約13分間足止めされた後、基地内への避難が許可された。
 徳田会長は「命が助かるかは1分1秒の判断に懸かっている。これまでの訓練は一体、何だったのか」とつぶやいた。

 米軍基地は日米地位協定に基づく排他的管理権を有しており、一般人は立ち入りできない。だが東日大震災を受け、2012年から津波による避難で、米軍基地内の立ち入りを許可する現地実施協定が北谷町など基地周辺自治体と米軍の間で結ばれてきた。

 北谷町によると、警報を受けて3日午前9時4~5分にかけてキャンプ・フォスターと嘉手納飛行場に基地内への立ち入り避難を要請した。両基地とも同10分に通行を認めるとの連絡が町にあった。しかしフォスターで実際にゲートが開放されたのは同23分だった。

 本島中部の高台は基地が立地しており、避難ルートは限られる。基地内を通るべきか、民間地を使うべきか―。徳田会長は「住民の判断を迷わすべきではない。町が要請してゲートが開くのではなく、警備員が警報を受け即時開放できる体制にしてほしい」と訴えた。

 北谷町基地・安全対策課の担当者は「当時の経緯を確認、検証し、基地の防災担当者と対応を協議したい」と話した。

 今回の津波警報を巡り、米軍嘉手納飛行場と普天間飛行場、キャンプ・ハンセンでも各周辺自治体との協定に基づき住民が基地内を通って避難した。各自治体によると避難に関するトラブルの報告はない。一方、キャンプ・キンザーのある浦添市は住民の基地内避難について「確認中」としている。

 (梅田正覚)