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9000人の街で訓練わずか70人 海抜2メートルに避難…「周知」に課題 <検証 津波避難>6


9000人の街で訓練わずか70人 海抜2メートルに避難…「周知」に課題 <検証 津波避難>6 防災経路の説明をする泡瀬自治会の中地雄高会長=11日、泡瀬公民館
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 海抜3メートル前後の低い地域に約9千人が暮らす沖縄市泡瀬地区では、3日午前9時1分に津波警報が発表された後、各所で高台に避難する車の渋滞が見られた。その様子に泡瀬自治会の中地雄高会長は避難する経路と場所の周知不足を痛感した。

 同自治会では災害時に高台に向かう三つの避難ルートと、垂直避難できる5階以上の高層マンションなど11カ所を避難場所として設定。ただ、周知を図る防災訓練の参加者は約70人にとどまる。

 その結果か、3日は避難ルートの渋滞に加えて、海抜2メートルのため閉鎖した泡瀬公民館に高齢者が避難してしまう危険な状態もあった。中地会長は「防災に関する住民の理解向上に取り組みつつ、避難場所となる高層マンションと連携を図りたい」と語る。

 避難場所の周知不足については防災士で、西原町の西原台団地の防災アドバイザーを務める新城格さん(75)も痛感したという。同団地付近でも高所へ避難する渋滞を確認したため「行政や防災関係者による地域防災情報の周知や、住民の知る努力が足りていない」と警鐘を鳴らす。

 西原町によると、2021年に発行した避難誘導マップには「避難所」はあるが、一時的な「避難場所」は明示されていない。町は4月中にも、避難場所も明示した改訂版の避難誘導マップを制作し、周知していく予定だ。

 低地の海沿い地域の中で、本部町は3日午前9時25分、宜野座村は同10時3分に、避難指示から、住民に直ちに身の安全の確保を求める最も警戒レベルの高い「緊急安全確保」に切り替える対応を取った。

 本部町によると、住民の避難行動は確認できたものの春休み中で観光客が多いことや、満潮時刻と津波到達予想時刻が重なる恐れがあったためという。

 宜野座村では、避難呼び掛け後も海沿いの漢那区に住民が残っている可能性を考えたという。村によると1日に津波避難計画を策定しており、公用車を使った避難周知を迅速に実施できたという。村の担当者は「実際に津波は観測されなかったが、これを機に大規模災害に備えた準備を進めたい」と話した。

 (福田修平、藤村謙吾、武井悠、金城大樹)
 (おわり)