うるま市石川のゴルフ場跡地への陸上自衛隊訓練場の整備計画について、木原稔防衛相が断念を表明したことを受け、地元の旭区住民は安堵(あんど)を示した。一方で、県内の他の場所で整備される可能性を懸念した。
訓練場予定地から約200~300メートルの距離にある旭区公民館はイベントやサークルも盛んで区民の集う場所だ。公民館に向かう途中だった冨着志穂さんは「安心感でいっぱい」と話した。「小さな力が大きく立ち向かい、思いがちゃんと伝わった。大人の頑張り、覚悟を子どもにちゃんと示せたと思う」と胸を張った。
区内を散歩していた83歳の男性は「ここは眺めもいいし、静かだ」と海の方を指さした。「こんなところに訓練場をつくるのはおかしい。断念というのは良い話だ」と受け止めた。
男性には79年前の沖縄戦で負った傷が顔に残る。「何かが起こったら基地がある所が狙われる。沖縄には基地が多すぎる。訓練場が必要なら本土に持っていったらいい」と思いを話した。
自衛隊の認識については住民の中でもさまざまな意見がある中、政治的スタンスを超えて住民は断念を求めて一致した。区民の70代男性は「石川はチリ津波や宮森小のジェット機墜落など大きな事故が起こっている。訓練場ができればまた起きるのではないかと、住民たちは頭をよぎるだろう。だから保革超えてみんなで団結したんだ」と振り返った。
自宅の庭で作業をしていた60歳の女性は訓練場計画の断念に「ひと安心だ」と話す。しかし県内の別の場所へ整備される可能性もあり「どこにいくのかが心配。そこに住む人も私たちと全く同じ気持ちになると思う」と懸念を示した。
金武町内の全5区長が加盟する町区長会の会長を務める、島本勇人屋嘉区長は「断念という望みが達成できた」と胸をなでおろした。
訓練場の整備予定地は同町屋嘉区の近隣に位置する。島本区長は3月にうるま市で開かれた市民集会で騒音問題などを懸念し「長い闘いになると思う」と発言していた。島本区長は「時間がかかると言ったがとんとんと進んだ印象だ。地元の反対熱を国も感じたのでは」と手応えを感じた。
(金盛文香、玉城文、武井悠)