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ハワイ移民県人史発見 1941年出版 1世の記録、戦禍免れ 和歌山で保管


ハワイ移民県人史発見 1941年出版 1世の記録、戦禍免れ 和歌山で保管 「ハワイ沖縄県人発展史」の複製本。移民1世伝記には、名前や出身地だけでなく、移民後の職業遍歴や写真もある=19日、那覇市の県立図書館
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 沖縄からハワイに初めて移民が渡った1900年から約40年の歴史や移民1世の伝記などを記した「布哇(ハワイ)沖縄県人発展史」が、和歌山市民図書館で保管されていた。複製本を作成した沖縄県立図書館が19日、那覇市の同館で発表した。県立図書館によると、書籍は世界で1冊しか確認されておらず、戦禍をくぐり抜けたとみられる。これまで、ハワイ移民の歴史概要が書かれた資料はあったが、ハワイ移民の初期の歴史が詳細に記された資料は初めて。歴史研究だけではなく、現在3世以降の子孫にとって1世の暮らしを知ることができる貴重な書籍だ。

 発展史は1941年、カウアイ島のカウアイ県人連合協会が出版した。全593ページで、移民40年史や596人の移民一世の伝記、3542人の県人住所録からなる。40年史は大規模農業の労働者として肉体労働や沖縄人差別に耐えた1世の苦闘から、多方面の産業で活躍し始めた2世の様子まで描かれている。伝記は渡航後の職業遍歴が触れられ、移民初期の暮らしが分かる。

 著者は東風平村(現八重瀬町)出身で、カウアイ島の邦字新聞で記者をした親泊義良氏とされる。37年に退社後、ハワイ中を調査し執筆した。原稿は41年1月、東京の県出身編集者に送られ、7月に印刷されたが、8月に米政府が日本の商業船の入港を禁止にした。同年12月に太平洋戦争が開戦。親泊氏と親交のあった2世の比嘉太郎氏のエッセーには、倉庫に積まれた書籍は「爆撃に遭って焼失したと聞いている」と書かれている。

 書籍は、和歌山市民図書館が移民資料室の開館に合わせて国内の古本屋から集めた資料の一冊だった。

 県立図書館は3年前、資料調査で訪れ書籍を発見した。作成した複製本は県立図書館で閲覧できる。和歌山市民図書館のデジタルアーカイブでも閲覧可能。ハワイ沖縄系図研究会のアーカイブでは、人名などがキーワード検索できる。

 19日の記者発表で、県立図書館の大宜見勝美館長は「移民1世の人生が詰まっている」と述べた。

 ハワイ沖縄連合会の仲宗根ブランドン会長は「自分のルーツを知り、アイデンティティーを確認できる貴重な資料。素晴らしいニュースを県人会でシェアでき大変喜ばしい」と話した。

 (高橋夏帆)