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高い経済効果に再開願う声 大崎氏、沖縄側の主体性を求め <連載「終幕 沖縄国際映画祭を振り返る」・下> 


高い経済効果に再開願う声 大崎氏、沖縄側の主体性を求め <連載「終幕 沖縄国際映画祭を振り返る」・下>  第9回沖縄国際映画祭のオープニングセレモニーであいさつする映画祭協力会と各応援団。画面に映るのは大崎洋実行委員長=2017年4月21日、那覇市辻の波の上うみそら公園ステージ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄国際映画祭は2009年、北谷町美浜の海が見える会場から始まった。当時北谷町長だった野国昌春さんは開会前、町長室を訪ねたガレッジセールの川田広樹さんと大崎洋実行委員長にこうお願いしたのを覚えている。「1回と言わずずっとやってください」。それから16回、場所を変えながら続いた映画祭は、地域経済にもインパクトを与えた。

 北谷町での開催は、大崎さんが声をかけたことがきっかけだった。野国さんは「予算はほとんど吉本持ち。町財政からは30万円ほどしか出してない」と振り返る。北谷町美浜には映画館、ビーチ、飲食店、ホテルが集中する。「開催のためのポテンシャルが高かったのだと思う」。野国さんによると当時、二十数万人が北谷町を訪れた。

 「山を高くしないと底が広がらない。『山を高くする』ことを沖縄としてどうするかもテーマとしてある」。大崎さんは映画祭が沖縄の産業につながり、県民全体に循環するよう意識していたことを明かす。海外からの作品上映が多かった回では、海外のメディアも招待した。狙いは地域のPRだった。各地域のCMを制作した回では地元の産品を海外に売り出そうと考えた。各地域に応援団を発足させ、通年で地域活性化につながる取り組みも試みた。だが「どれも目立った動きがなかった」とこぼした。

 映画祭には県外からも多くの観客が訪れた。おきぎん経済研究所の試算によると、2018年の沖縄国際映画祭の経済波及効果は約80億2266万円。19年は85億4077万円で、同年にりゅうぎん総研が試算したプロ野球キャンプの経済効果(141億円)の6割程度と、高い経済波及効果をもたらした。おきぎん経済研究所は映画祭に関して「観光需要の回復も相まって、さらに沖縄を盛り上げてくれるイベントとして期待されていた」と話した。

 野国さんは「なんとか続けてほしい。どこが音頭を取るのかは分からないが…」と再び映画祭が開催されることを願う。大崎さんは、新たな形での開催に意欲を匂わせながらも「ゼロベースだ。どうするかは僕が決めることではなく、具体的にこうしたいと沖縄の人から言ってほしい」と沖縄側の主体性を求めた。

 (金盛文香、與那覇智早、田吹遥子)