有料

本丸は国交相裁決 法的根拠見直し突破口にも


本丸は国交相裁決 法的根拠見直し突破口にも 新基地建設が進む名護市辺野古
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

解説
国を相手取って市民が起こした辺野古新基地建設を巡る一連の訴訟で、原告の住民の訴えを認めたのは初めての司法判断だ。
これまでは、抗告訴訟を提起する際に求められる行政事件訴訟法(行訴法)に基づく「原告適格」の認定がハードルとなってきた。
住民と国との争いのみならず、県と国との訴訟でも司法の「門前払い」が続き、今回の訴訟も厳しい判決を予想する声は多かった。
那覇地裁は2022年4月の判決で、一旦は認めた4人の原告適格を裁判長の交代を経て一転させ、訴えを退けていた。
しかし、原告は控訴審で、04年の行訴法改正で原告適格について「法令の規定の文言のみ」に依拠しないとして認定の範囲を実質的に広げた点を指摘。一審に続き、法改正に携わった専門家の意見書も提出するなど、粘り強い主張で司法の厚い壁を開いた。
ただ、今回の判決は原告にとっては「スタート」の位置づけだ。
争点の主体は、沖縄防衛局の設計変更申請の承認を撤回した県の処分を取り消した国交相の裁決だ。裁決が公有水面埋立法に照らして違法だったのかどうか。違法であれば、県の撤回処分が有効となり、辺野古工事の正当性は揺らぐ。
地裁での差し戻し審理が確定すれば、工事の法的根拠を見直すための突破口となり得る。
国は1月、史上初の代執行で工事を強行して以降、新基地推進の流れを急加速させている。市民に無力感が広がる中での判決は、一層意義深いものだ。 (安里洋輔)