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平和への思い 演じ紡ぐ 首里高生 瑞泉学徒テーマに劇 奪われた青春、生き残った苦しみ…


平和への思い 演じ紡ぐ 首里高生 瑞泉学徒テーマに劇 奪われた青春、生き残った苦しみ… 戦争前の日常生活を演じる演劇部の生徒ら=25日、那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 優希

 このほど解散した瑞泉同窓会の平和への願いを継ごうと、首里高校演劇部の生徒が25日、瑞泉学徒隊をテーマにした演劇「あの夏の織姫」を披露した。楽しい学校生活に戦争が影を落とし、沖縄戦に突入。青春のまっただ中で命を落としていった学徒たちの悔しさ、生き残った苦しみを力いっぱい演じた。「伝えていく使命を感じた」と生徒たち。瑞泉同窓会元会長の新元貞子さん(98)も鑑賞し「沖縄戦を忘れず、平和を守ってほしい」と思いを話した。

 演劇は25日に那覇市のダブルツリーbyヒルトン那覇首里城で開かれた県立第一中学校・首里高校の同窓会組織「養秀同窓会」の交流会で披露された。

 解散し、養秀同窓会に合流した瑞泉同窓会は、県立首里高等女学校と旧県立女子工芸学校の同窓生で構成していた。首里高女は現在の首里高校染織デザイン科の前身に当たり、沖縄戦では瑞泉学徒隊として負傷兵の看護にかり出された。

 演劇の台本は開邦高校の浜比嘉律教諭が作成し、首里高生に演じてほしいと呼びかけた。

 物語は女子学徒4人の学校生活の場面から始まる。機織りや縫い物を互いに教え合う楽しい日常が重点的に表現され、はじけるような笑顔が印象的だった。

 そうした日常の中でも「兵隊さんの服を縫う。お国のためにご奉公」「もし死んだら靖国神社で織り姫になる」などの会話があり、軍国教育を受け、国のために死ぬことをいとわない考えが染みついた様子も描かれた。

 戦争に突入していく終盤では学徒3人が命を落とす。最後に1人だけ生き残った学徒を、染織デザイン科3年の新垣依緒里さん(17)が演じた。「なんで私だけ生きているの」「死にたかった」と叫び、生き残った苦しみを表現する演技は迫真だった。新垣さんは「私たちが(平和への思いを)紡いでいきますと宣言する思いで演じた」と振り返った。

 クライマックスでは亡くなった学徒が「私たちの青春を伝えて」と生き残った学徒の背中を押した。幕が下りると会場は大きな拍手に包まれ、涙を流す人もいた。

 演劇部部長で普通科2年生の掘田茉奈さん(16)は「今回、瑞泉学徒隊について初めて知ることが多く勉強になった」と話した。終演後、新元さんからお礼を言われたといい「とてもうれしかった。伝えていかないといけない使命を感じた。いろんな表現方法で戦争を伝えていきたい」と力を込めた。

 新元さんは「戦争の体験者や語り部がほぼいなくなった。若い人たちが戦争のむごたらしさや悔しさを表現してくれてありがたい」と語った。

新元貞子さん

 (中村優希)