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自衛隊ハラスメント 被害申告で8割が「不利益」 「特別防衛監察」の機能不全が露呈 弁護士ら調査


自衛隊ハラスメント 被害申告で8割が「不利益」 「特別防衛監察」の機能不全が露呈 弁護士ら調査 自衛隊内のハラスメント根絶に向けた要請書を手渡す弁護士や国会議員、自死遺族=18日、国会内
この記事を書いた人 アバター画像 明 真南斗

 【東京】「自衛官の人権弁護団・全国ネットワーク」は20日までに、防衛省が実施したハラスメントに関する特別防衛監察で被害を申し立てた隊員らに対するアンケート結果を公表した。23人が回答し、特別防衛監察に申し出たことで不利益となる取り扱いを受けたと答えた人が18人(78.2%)に上った。うち5人が「退職を強要された」と回答した。

 陸上自衛官だった五ノ井里奈さんが訓練中の性被害を訴えたことを受け、防衛省はハラスメントに関する特別防衛監察を実施、2023年に結果を公表し、パワハラやセクハラなど1325件の申し出があったことを明らかにした。同ネットワークはその後、被害を申し立てた隊員を対象にインターネットでアンケートへの回答を募った。

 ネットワークのアンケートで、被害を申し立てた人がさらに不利益な扱いを受けていた実態が明らかになり、特別防衛監察の実効性の欠如が露呈した。特別防衛監察への満足度については1人が「やや不満」を選択し、残り全員が「大いに不満」と回答した。

 自由記述欄では「特別防衛監察で訴えたことで、改善されないどころか、ますます悪い部分が助長された」「(上司から)『なんてことを書いてくれたんだ』と言われ、科の職員ほぼ全員から無視や仕事外し、倉庫で一人で仕事などの嫌がらせを受けた」「退職理由を書き直しさせられた」などの回答があった。

 ネットワークが18日、国会内で開いた集会で武井由紀子弁護士が調査結果を説明した。「安心して相談できるようにすることが必要だ。申し出た人が処分を受けるような状況では誰も声を上げられない」と指摘し、改善を求めた。

 那覇基地でのセクハラ被害を訴えたが、十分に対応してもらえなかったとして裁判を起こしている現役の航空自衛官も集会に出席し「組織が契約を結んでいる弁護士が加害者とタッグを組んで、組織の幹部が関与してセクハラを隠ぺいした」と語った。

 ネットワークは防衛省担当者らを集会に招き、ハラスメント根絶を求める要請書を提出した。

 (明真南斗)