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裁判員対象は原則公表 非公表に「政治的配慮か」と疑念も 米兵女性暴行事件 沖縄


裁判員対象は原則公表 非公表に「政治的配慮か」と疑念も 米兵女性暴行事件 沖縄 那覇地検(資料写真)
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 ことし5月に発生した在沖米海兵隊員による不同意性交致傷事件は、裁判員裁判で審理されるが、政府や捜査当局から発表はなく、本紙の独自取材によって明らかになった。

 報道がなければ公判期日の公表まで明らかにならず、再発防止などの対策が遅れた可能性がある。性犯罪は被害者保護のため報道発表しないケースもあるが、那覇地検はこれまで裁判員対象事件は原則公表していた。識者は「被害者ではなく、政治的な配慮ではないかとの疑いが出る対応だ」と指摘する。

 事件は5月26日に発生。海兵隊員は逃走したが、通報を受けた県警が基地外で発見し、逮捕に至った。日本側が身柄を確保して捜査し、那覇地検が6月17日に不同意性交致傷の罪で起訴した。

 市民が重大な刑事事件を裁く裁判員対象事件について、那覇地検は起訴時に原則として報道発表している。昨年は不同意わいせつ致傷罪など、裁判員裁判で審理される性犯罪事件を少なくとも3件発表した。一方、ことし公判があった、家族間での事件については発表しなかった。

 那覇地検は2021年12月に米海兵隊員を強制性交等致傷罪で起訴した際も発表しなかった。仕事を終えて帰宅中の女性が被害に遭い、海兵隊員と面識はなかった。

 今回の不同意性交致傷事件も、被害者と面識はなかったという。小玉大輔次席検事は28日、報道陣の取材に、広報を控えた理由について「公益上の必要とともに名誉プライバシーの影響の有無や程度を考慮して慎重に判断した」と述べた。被告が米兵であることが判断に影響したかを問われ、「一般論として差をつけているわけではない」と答えた。

 琉大法科大学院の矢野恵美教授(ジェンダー法)は、性犯罪事件では被害者保護が重要だと強調した上で「面識がなく、被害者の名前を伏せれば個人が特定されないようなケースでも公表しないのは、政治的な配慮ではないかとの疑いが出る対応だ」と指摘する。

 相次ぐ米軍関係者の事件で、裁判員の心証に影響が出る可能性もあるとし「公表しない方が反発は大きくなる。実際には事件自体を公表すべきかどうかを被害者に確認していないのではないか。非公表の理由に被害者を利用することはやめてほしい」と述べた。