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中途失明の亡き弟と友の志を 安元健・東北大名誉教授が300万円寄付 沖視協が基金創設 沖縄


中途失明の亡き弟と友の志を 安元健・東北大名誉教授が300万円寄付 沖視協が基金創設 沖縄 安元健さん(左)と宏さん=1995年(提供)
この記事を書いた人 Avatar photo 宮沢 之祐

 海の毒の研究者として知られる東北大学名誉教授の安元健さん(89)=仙台市=が寄付した300万円を基に、沖縄県視覚障害者福祉協会はこのほど「宏基金」を設けた。安元さんは、身近で接した2人の視覚障がい者への敬意と愛情をきっかけに寄付した。「同じ境遇の人たちの幸せに少しでも役立てば、うれしい」と話す。

 安元さんは那覇市出身。魚介類が持つ毒の研究で世界をリードしてきた。宏基金は、一緒に川遊びをして育った3歳違いの弟の名前にちなむ。

 宏さんは米留の後、琉球電力公社(現在の沖縄電力)に勤務。しかし脳膿瘍になり、36歳で全盲に。県立沖縄盲学校の寮で生活訓練に励んだ。優しく明るい性格で、寮では若い同級生らに慕われた。マッサージ師の資格を得たが、心臓に疾患が見つかったこともあり、就職はかなわなかった。それでも、家族に当たり散らすことはなかった。何事にも前向きな人だったという。

 もう一人は同協会の前会長、山田親幸さん。共に那覇高校の6期生だった。山田さんは当時、既に視力が衰え、いつも教室の最前列でノートに大きな字で書いていたという。後に全盲となった山田さんは盲学校の教員になり、宏さんも教えた。那覇高の同窓会では、同協会への寄付を熱っぽく呼びかけていた。

 宏さんが一昨年、83歳で亡くなり、安元さんは「生きた証しを残したい」と今年になって寄付を決めた。ところが、山田さんも今年3月に亡くなった。安元さんは「寄付の報告をする直前のことで残念だ。二人が望んだ障がい者福祉への理解が進んでほしい」と願う。

 同協会は、宏基金を福祉機器の購入に充て、必要とする人への機器の紹介や貸し出しを検討している。

 (宮沢之祐)