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【深掘り】米軍普天間飛行場、無条件返還の声強まる 政府に衝撃走る恐れていた最悪の事態


【深掘り】米軍普天間飛行場、無条件返還の声強まる 政府に衝撃走る恐れていた最悪の事態 事故現場を訪れた比嘉茂政副知事に状況を説明する伊波洋一宜野湾市長(右)=13日午後6時半、宜野湾市
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍普天間飛行場周辺の民間地に米軍ヘリが墜落するという県民、宜野湾市、日米両政府にとって最も恐れていた最悪の事態が起きた。SACO(日米特別行動委員会)最終報告に基づく名護市辺野古沖での代替施設の完成には最低でも十三年以上かかり、その間に事故が再び起きないとの保証はなく、返還は一刻の猶予も許されないことが決定的となった。無条件返還や県外・海外移設も含め、日米が現行の移設作業の見直しを迫られるのは間違いない。普天間飛行場返還など在沖米軍基地問題は一九九五年の米兵による少女乱暴事件以来、重大な局面を迎えた。

 「早期返還についても当然、検討していかざるを得ない」。牧野浩隆副知事は厳しい表情で語った。県はこれまで現行の移設作業の実施が最も返還の近道だと主張してきた。現行の移設作業そのものを見直す可能性に言及した副知事発言は、県首脳が従来方針を全面支持する姿勢を初めて覆した瞬間だ。知事自身は記者会見で見直しを否定したが、県がいかに問題を深刻に受け止めているかが分かる。

 今年七月の米軍再編の日米協議では米側から「なぜ代替施設は十数年かかるのか」と現行の移設作業の長期化に不満が出ていた。昨年十一月に来沖したラムズフェルド米国防長官も上空から同飛行場を視察した際に「危険だ。そして老朽化している」と指摘するなど、米側からも早期移転を求める声は根強い。

 これに対し日本側は現行の移設作業を進める考えに変更がないことを繰り返し主張し、稲嶺恵一知事も「現実に進んでいることを一日一歩進めたい。県方針に変わりない」と述べ、国の方針に同調する立場だが、県内部の混乱も否めない。

 ブラックマン四軍調整官、嘉数知賢防衛政務官らが事故当日の夜に県庁を訪れて謝罪するなど、日米双方とも事故による県側との亀裂を生じさせないよう迅速な対応を見せている。日本政府としては現行の移設作業への影響を回避したいとの思いがにじむ。

 「表向きはこれまで通りに作業をするという姿勢を見せるが、本音は大変な衝撃を受けている。移設作業はこれまで通りというわけにはいかなくなるのは間違いない。もう駄目だ」。防衛施設庁関係者は激しい動揺を隠さない。

 地元の伊波洋一宜野湾市長も県内移設ではない五年以内の無条件返還を求めている。岸本建男名護市長も事故に憂慮の念を示しており、名護市の移設受け入れ方針にも影響を及ぼす可能性も出ている。

 七月の世論調査では全体の六割強が無条件返還や県外、国外への移設を求めており、今回の事故で県内移設の作業ではもはや県民の理解を得られないことは確実で、現行の移設作業が破たんへの道を急速に進みつつあるともいえる。

(政経部・松永勝利)