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【識者談話】米軍属、住民登録せず行方の把握困難も 口座差し押さえにも壁 扶養料回収 松崎暁史(弁護士)


【識者談話】米軍属、住民登録せず行方の把握困難も 口座差し押さえにも壁 扶養料回収 松崎暁史(弁護士) 松崎暁史氏
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 元在沖海兵隊員で現在は軍属の元夫からDVを受け、離婚後も扶養料の回収に悩む女性の代理人を務める松崎暁史弁護士に、軍属から扶養料を回収することの困難さや、女性が暴力にさらされる背景を解説してもらった。


 日米地位協定該当者が扶養料の支払いを滞らせた場合、これを強制執行によって回収することには困難が伴う。米軍では扶養料を支払うよう軍種ごとに通達が存在し、所属部隊の上官と交渉できれば現役の軍人からは支払いを受けられる可能性が高まる。上官の命令に背いて不払いが続けば軍事裁判となる可能性も出てくる。

 しかし、民間人であり、軍の指揮命令系統下にない軍属は難しい。住民登録をせずに日本に滞在できるため行方が分からなくなった場合に住所を把握することが困難だ。

 さらに給与口座は日本法人のない米国の銀行を使っており、日本の判決や審判に基づき口座差し押さえすることが困難である。米国国防予算局(DFAS)から支払われる給与自体を差し押さえることも難しい。当該軍属が日本にいる状態だと米国で扶養料回収の裁判をすることも困難だ。

 地位協定該当者が夫婦や交際関係の中でパートナーに対する経済的優位性を悪用して女性に暴力や性加害を加えたケースをいくつか担当してきた。法的に扶養料を回収することが困難なため、女性側は判決や審判があっても相手方とさまざまな「交渉」をせざるを得ず、その中で被害に遭うケースだ。今回はその悪質なケースに該当する。

 (談)