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暴力で離婚、扶養料求めにまた暴行 米軍属DV、被害者保護に壁 捜査阻む地位協定、米軍指揮下になく


暴力で離婚、扶養料求めにまた暴行 米軍属DV、被害者保護に壁 捜査阻む地位協定、米軍指揮下になく 米軍属の元夫からのDVにより心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患ったとして苦しみを訴える女性=4月、那覇市
この記事を書いた人 Avatar photo 梅田 正覚

 年々増加傾向にある家庭内暴力(DV)。日本にはDV防止法など被害者を守る法律や制度があるものの、加害者が米兵や軍属だと被害者の保護や離婚後の扶養料の回収が難しくなる。日米地位協定の保護下にありながら米軍の指揮下にはない軍属だと、困難さは増す。さらに、加害者が経済的優位性を悪用して復縁を迫り、被害者がさらなる暴力に巻き込まれる事例もある。

 県内に住むひとり親の女性は、元在沖海兵隊員で現在は軍属として米軍岩国基地(山口県岩国市)で働く米国人の元夫からのDVにより心的外傷後ストレス障害(PTSD)を患った。元夫は扶養料を支払わず、女性は回収のため昨年12月、岩国市の基地外にある元夫宅を訪問し、元夫から顔を平手打ちにされたり、首を絞められて持ち上げられたりする暴行を受けた。

 女性は約10年前に海兵隊員だった元夫と結婚した。結婚後にDVが始まり、異動先の岩国基地内の住居でも暴力を振るわれた。山口県警岩国署に相談したが、地位協定を理由に「対応できない」と断られたという。

 軍警察に訴えると捜査が開始された。その後、元夫は米軍を辞めたが処罰されたかは不明だ。女性は離婚して子どもと沖縄に戻ったが、数年前から在沖米軍の軍属として勤務していた元夫が姿を見せ、扶養料の支払いをちらつかせて関係修復を求めてきた。女性は離婚時に家庭裁判所で扶養料の支払いを定めた調停調書を得ていた。だが米軍関係者の給与差し押さえは困難で、支払わない場合の回収は不可能に近い。

 女性は経済的に困窮し、扶養料回収を目指して再び交流を持つようになった。元夫は扶養料を支払わないことによって生まれた経済的優位性を利用して、暴力に及んだ構図だ。

 女性は国際家事相談窓口「ウーマンズプライド」(北谷町)のスミス美咲代表に相談した。実は、スミス代表の下には元夫からの暴力や性的暴行を訴える別の女性3人から相談が寄せられていた。スミス代表は元夫の所属部隊の上官に接近禁止令などの発令を求めたが、軍属は指揮下にないとして断られた。さらに同居していないため日本の裁判所からの保護命令も受けられない。女性は日々、元夫の影におびえながら、支援機関で生活する。

 女性は今年3月に刑事告訴し、元夫への捜査が続く。「私の他にも被害者がいる。彼を野放しにするのは間違っている。捜査機関は厳正に対処し、国外へ追放してほしい」と訴えた。

 (梅田正覚)