【糸満】沖縄戦の戦闘を指揮した第32軍司令部の最後の拠点とされる、糸満市の摩文仁第32軍司令部壕(ごう)の内部映像や写真を展示するパネル展が19日から、平和祈念公園案内所で始まった。壕の資料や記録はほとんど残っておらず、内部を正式に記録・保存・公開するのは初めての取り組みという。壕の内部を撮影した約4600枚の写真を基に測量し、専用のソフトで解析した3D動画や、動画から生成した断面図なども展示している。
埋蔵文化財の発掘調査を支援する専門会社「ティガネー」と、戦没者遺骨収集情報センターが2023年から共同で壕の内部調査を実施した。壕は自然洞穴2カ所をつなげ、東西に壕口を持つ貫通壕になったと推測され、壕の延長距離は約80メートル、高低差は9メートルであることが調査で分かった。新たな遺骨や遺物の発見はなかったという。
現在、壕内部の崩落も進み、今後は中に入ることが困難と予想されている。県平和祈念財団の松川満常務理事は「79年目にして初めての取り組みであるが、落盤もあり、戦時中の様子を示しているものではない。しかし、79年を経て今の状況を記録として残しておくのは価値があるのではないか」と話す。戦没者遺骨収集情報センターの岩下喜博センター長は「共有の財産として情報を有効活用してもらえるように、いろんな方に広く利用してもらえることを希望している」と話した。
展示は9月末までの予定で観覧無料。
(田中芳)